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異常に強いサプライチェーンを作るため、グローバルで除くべき“ムダ”「5つのムダ」から取り組むDX時代の真のカイゼン(3)(2/2 ページ)

本連載では製造業が取り組むべき、DX時代の「真のカイゼン」について解説する。最終回となる第3回ではサプライチェーンのカイゼンを扱う。敏しょう性、回復力、速度を備えたサプライチェーンを作るのに必要なものは何かを紹介したい。

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敏しょう性、回復力、速度を備えたサプライチェーンを目指す

 調達物流においては調達ルート分散など、変化に対応しやすい体制を構築できているのか。生産戦略においては、既存工場の生産能力と組織能力を拡張し、バックアップ生産など、リスクに強い柔軟な体制が整えられているのか。製品物流においては、完成品在庫の最適化や流通パートナー開拓など顧客への接近と流通チャネルを再定義することができるのか。こうした問いを領域ごとに問い続ける必要がある。

 このように具体的にサプライチェーンのムダを省き、強化していくには、上記に挙げた敏しょう性だけでなく、回復力/弾力性(Resiliency)に加えて速度(Velocity)も兼ね備えたデジタルのサプライチェーンプラットフォームが大切になる。サプライチェーンプラットフォームを構築することで、全体を可視化して、異常があれば敏速に対処し、弾力性ある対応を素早く実現できるようになる。

 また、サプライチェーンではサプライヤーをはじめとして各国のさまざまな企業と連携が避けて通れない一方で、関係者に情報を保有しているのが通常だ。そのため、社内外の関係者の鮮度・精度の高い情報を集約し、不足の事態にも対応できるような、高い接続性を備えたサプライチェーンプラットフォームが求められている。

(5)グローバルオペレーションで発生するムダ

 グローバルでビジネスを展開する製造業は、成長や需要に合わせて海外拠点を増やしていくが、それに伴い海外拠点の管理コストも発生する。この管理コストは、予想を超えて大きくなりがちなため、ムダのカイゼン効果も高くなる。

 まず見直すべきなのは、各拠点の機能を共通化して、一元管理することだ。業務を標準化することで重複する機能を削減し、さらには機能単位で損益貢献評価や改善余地を把握することで管理間接の効率化も推し進められる。もちろん、単純に本社側だけで判断するのではなく、現地の声を聞いて精査した上で共通化しなければならない。一見するとムダに見えたものが、現地では不可欠だったというケースもある。十分な精査が必要であることは強調しておきたい。

 共通化するべき代表的な機能が情報システムだ。海外展開は、新たに拠点を起ち上げるケースもあるが、買収によって現地企業を吸収するケースも多い。その際、本社と同じソフトウェアが使用されている場合は統一したライセンスとして契約することで、異なっている場合はソフトウェアを統一することで、コスト削減につながる。このようにシステムを集約化することは、各拠点のブラックボックス化を防いだり、新拠点立ち上げ時の短期間でのシステム構築にもつながる。

 海外拠点は、本社から人員が派遣されることも多く、最近では海外拠点の優秀な人材が他の拠点で働くケースも増えている。その場合、同一システムを利用しているのであれば、新たに操作方法を学ぶことなく、業務を進めることができ、拠点間での人材の相互補完も可能となる。これは即時のコスト削減にはつながらないが、ムダ削減につながる重要な要素となる。

守りのDX実現のために、全社視点での真のカイゼンの推進を

 今回紹介したサプライチェーンやグローバルのオペレーションのムダ削減は、情報システム部門や一部門だけでは実現しえない。

 サプライチェーンは、複数の部門が関わり、社外の関係企業との連携が必要なり、経営戦略に適したサプライチェーンプラットフォームを構築する必要がある。情報システムの統一も経営戦略を踏まえたものであるべきで、経営層を含む全社体制でムダを省いていかないと、経営に貢献するカイゼンにはつながらないだろう。これは、連載第2回のカイゼン(1)〜(3)で述べた生産現場・グループ内での個別から全体最適化へのカイゼンも同様である。

 本連載で説明したようなカイゼンに全社視点で取り組んでいただくことで、ぜひ守りのDX、ひいてはその先にある攻めのDXを通じた新しい顧客価値の創造へとつなげて欲しい。

⇒前回(第2回)はこちら

⇒「『5つのムダ』から取り組むDX時代の真のカイゼン」のバックナンバーはこちら

筆者紹介

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佐藤 幸樹(さとう こうき)

インフォアジャパン株式会社 ソリューションコンサルティング本部 プリンシパルソリューションアーキテクト。
インドネシアでの事業会社の立ち上げを経て、1998年にERPの世界に入り、以降一貫して製造業の業務改善のためのソリューション導入を支援し続けている。


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