エンジンキャリブレーションでのデータ測定を機械学習で8割削減、マツダが採用:モデルベース開発
Secondmind(セカンドマインド)は2022年2月3日、エンジンのキャリブレーション(適合)を効率化するクラウドベースのモデルベースキャリブレーション用機械学習ソフトウェアプラットフォームについて、マツダと複数年のライセンス契約を締結したと発表した。量産用のエンジンキャリブレーションプロセスの効率を、従来の2倍以上に高めることを目指す。
Secondmind(セカンドマインド)は2022年2月3日、エンジンのキャリブレーション(適合)を効率化するクラウドベースのモデルベースキャリブレーション用機械学習ソフトウェアプラットフォームについて、マツダと複数年のライセンス契約を締結したと発表した。量産用のエンジンキャリブレーションプロセスの効率を、従来の2倍以上に高めることを目指す。
セカンドマインドは、機械学習の研究開発を行う英国のスタートアップ企業だ。2020年12月に日本法人を設立し、マツダとは2年間にわたってキャリブレーションの効率化に向けた共同研究を進めてきた。技術や製品の開発は英国本社で行い、日本法人は技術サポートや営業を担う。
今回、マツダがライセンス契約を締結したのは、エンジンの燃費値が最も良好になる領域「燃費の目玉」を従来の手法よりも短時間で見つけるための機械学習ソフトウェアだ。セカンドマインドはこれをSaaS(Software as a Services)として提供する。従来の手法では、点火タイミングと燃料噴射の条件ごとにくまなく燃費データを測定する必要があり、時間がかかっていた。また、測定の中でエンジンに高い負荷がかかるため、複数の試作品が必要でコストとなっていた。
セカンドマインドの機械学習ソフトウェアは、「アクティブラーニング機能」によって、統計的に高い信頼度で次に測定すべきポイントを提案する。測定するにつれて、提案の精度が高まるという。これにより、測定データを従来の手法から8割減、測定期間は半分に抑えることができる。エンジンのキャリブレーションのような大規模な制御開発において、機械学習を活用するのは珍しいという。
“測定すべきポイント”を高い信頼度で提案できるのは、キャリブレーション対象となるエンジンや、その制御パラメータを学習データとしてセカンドマインドのクラウドに取り込んでいるからだ。ノッキング限界や物理的な特性、排出規制などの制約条件も学習データとして取り込める。これにより、エンジンの複雑な入出力を再現したモデルを構築できるという。制御パラメータは50種類まで対応する。また、エンジニアが持つノウハウや経験を反映させて学習させることも可能だという。
既存のテストベンチシステムや適合開発ツールとも連携する。さらに、エンジン以外にもEV(電気自動車)やHEV(ハイブリッド車)の電動パワートレインのキャリブレーションにも対応できるとしている。
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