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章男社長「電気自動車の味つけは難しい」、トヨタが期待するマツダの商品企画力電気自動車

トヨタ自動車とマツダは、業務資本提携に関する合意書を締結した。互いに500億円を出資することにより、トヨタ自動車に対するマツダの出資比率は0.25%に、マツダに対するトヨタの出資比率は5.05%となる。

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業務提携から資本提携に発展。笑顔で握手を交わす2人の社長
業務提携から資本提携に発展。笑顔で握手を交わす2人の社長

 トヨタ自動車とマツダは2017年8月4日、東京都内で会見を開き、業務資本提携に関する合意書を締結したと発表した。互いに500億円を出資することにより、トヨタ自動車に対するマツダの出資比率は0.25%に、マツダに対するトヨタの出資比率は5.05%となる。

 両社は2015年5月に業務提携を結んでおり、資本提携にまで踏み込むことにより協力関係をさらに深化させる。具体的には、米国での生産合弁会社の設立や、電気自動車(EV)のプラットフォーム・コネクテッド技術・先進安全技術の共同開発、商品補完の拡充を進める。

 トヨタ自動車 社長の豊田章男氏とマツダ 社長の小飼雅道氏は、口をそろえて「未来のモビリティ社会は自動車業界だけでは作れない。GoogleやApple、Amazonといった新しいプレーヤーもモビリティ社会を良くしたいという情熱を持っている。彼らと競争し、協力し合うことが重要」と話す。

 その一方で、「自動車は主役としてモビリティを支えてきた自負がある。自動車メーカーはとことんクルマにこだわらなければならない」(豊田氏、小飼氏)、「これはクルマを愛する者同士がもっといいクルマを作っていくための提携。クルマをコモディティにはさせない」(豊田氏)と業務資本提携の意義を説明した。

米国に新工場

マツダの小飼雅道氏
マツダの小飼雅道氏

 トヨタ自動車とマツダは、米国に折半出資の生産会社を設立する検討を進めることで合意した。生産能力は30万台規模で、生産する車種は、マツダが北米市場に新しく導入するクロスオーバー車と、トヨタ自動車の北米向け「カローラ」だ。2021年の稼働を目指す。投資額は16億米ドル(約1770億円)で、雇用は4000人を想定している。

 トヨタ自動車はカローラの生産を米国に集約し、建設中のメキシコ・グアナファト工場での生産車種はカローラから「タコマ」に変更する。ピックアップトラックの生産を増強することにより、北米全体で年間40万台を生産できるようにする。マツダはメキシコ工場で「アクセラ」「デミオ」を生産し、米国・中南米・欧州向けに展開している。トヨタ自動車との合弁会社による新工場によって、マツダは北米事業の強化につなげる。

電気自動車の味つけは難しい?

トヨタ自動車の豊田章男氏
トヨタ自動車の豊田章男氏

 EVプラットフォームの共同開発は、「将来や各国の規制など見通しが難しい中で、変化にフレキシブルに対応できる体制を準備する狙いがある」(小飼氏)。車種は、乗用車やSUV、小型トラックなど幅広く候補に入れて検討していく。

 プラットフォームやパワートレイン、それらの生産工程も含めたトヨタ自動車のクルマづくりの構造改革「TNGA(Toyota New Global Architecture)」の取り組みと、マツダのコモンアーキテクチャ構想やモデルベース開発の蓄積を持ち寄ることで、EVの基本技術を開発していく。トヨタ自動車が2016年12月に設置した社内ベンチャー「EV事業企画室」もこの共同開発に融合する。

 豊田氏はEVの課題として、重要部品のコスト削減と、走りの味づくりを挙げた。「あるスポーツモデルのEVに乗ってみてほしいといわれて運転したことがある。『EVですね』という感想で、特徴を出しにくいと思った。ブランドとしての味を出すことが挑戦になっていく」(豊田氏)と、個性や走りを重視する方針を示した。

 トヨタ自動車はマツダの商品開発力に期待をかけているようだ。小飼氏は「今後、中長期的に長く提携を継続するには、商品開発がトヨタに評価され続けなければならない」、豊田氏は「マツダが実践してきたクルマづくり、ブランドづくりを電気自動車でどう出せるか」とコメントした。

 この提携以前に、マツダは2019年にEVを投入する商品計画を発表している。約2年の期間でトヨタ自動車との資本業務提携の効果はどこまで反映されるのか。また、マツダよりもトヨタ自動車の出資比率が高いSUBARU(スバル)もEVを開発中で、2021年の製品化を予定している。ダイハツ工業や日野自動車も含め、どのように連携していくのか注目だ。

車載情報機器で再び協力

 今回の提携では、車載用マルチメディアシステムの関連技術の開発も含まれる。マツダは2005年からトヨタ自動車の情報サービス「G-BOOK」を採用、2013年以降は自社開発したシステム「マツダコネクト」を展開している。その後は、フォードとトヨタ自動車が立ちあげたコンソーシアム「スマートデバイスリンク(SDL)」にマツダも参加。SDLはスマートフォンアプリを車内で利用できるようにするオープンソースだ。トヨタ自動車は2018年にSDLを採用した車載システムを製品化する計画となっている。

 また、トヨタ自動車が保有する車車間・路車間通信技術をマツダと連携して普及させていく。トヨタ自動車では「ITSコネクト」として交差点での赤信号や右折時の注意喚起、通信利用型のクルーズコントロールといった機能を提供している。対応車種は、「プリウスPHV」「プリウス」「クラウン アスリート/ロイヤル/マジェスタ」。対応車種と台数が増えることでユーザーも利便性を実感しやすくなる。マツダは、車車間・路車間通信の普及促進に取り組むITSコネクト推進協議会の正会員だ。トヨタ自動車は同協議会の幹事会員を務めている。

 OEM(相手先ブランドによる生産)での商品補完も拡充していく。北米ではマツダからトヨタ自動車向けにデミオベースのコンパクトセダンを供給している。同モデルはマツダのメキシコ工場で生産しており、トヨタ自動車はマツダに対し、応分の設備投資と開発費用を拠出した。

 今後、日本では、トヨタ自動車からマツダに小型商用2ボックスバンを提供する。これ以外にも商品補完の可能性をグローバルで検討する方針だ。

トヨタ自動車の「ヤリスiA」(左)マツダの「Mazda2 sedan」(右)(クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車、マツダ

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