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待ったなしの脱炭素、難題の「スコープ3」は業界全体で取り組み強化をMONOist 2022年展望(2/3 ページ)

製造業をはじめ、産業界へのCO2削減に向けた取り組みの強化を求める社会的な声が強まっている。多くの企業がカーボンニュートラル達成に向けた自社の取り組みを加速させ、削減目標を外部に発信している。製造業を取り巻く現状と今後の課題を、概略的ではあるが整理しよう。

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「カーボンマイナス」を宣言する企業も

 カーボンニュートラル達成に向けて独自の目標を設定し、実現に向けた取り組みを進める企業も多い。2021年にはトヨタ自動車が、工場のカーボンニュートラル化の達成目標時期を、従来の2050年から2035年に前倒しすると発表した。この他、パナソニックが2030年までにスコープ1、2のカーボンニュートラル化を、日立製作所が2050年までにバリューチェーン全体でのカーボンニュートラル化を目標として掲げるなど、大手製造業各社が相次いで方針を発表している。

 中には、カーボンニュートラルからさらに一歩踏み込み、製品ライフサイクル全体でのCO2排出量を上回る削減効果を生み出す「カーボンマイナス」を目指す、コニカミノルタのような例もある。「DX−グリーンサプライヤー活動」と称して、自社取引先などに省エネ診断技術の提供や、省エネ実現に向けた施策展開を支援するなどの取り組みを通じて、サプライチェーン全体で2050年までにカーボンマイナスを達成すると発表した。


コニカミノルタはカーボンマイナスの目標を掲げる[クリックして拡大] 出所:コニカミノルタのWebサイトより引用)

方針決めても行動起こせず

 ただ、方針を掲げる企業が増加する一方で、製造業全体では脱炭素に向けたアクションをまだ具体化できていない企業も少なくないようだ。

 日本能率協会が2021年11月に公開した、製造業の生産部門を対象とするアンケート調査では、カーボンニュートラル対応に関する「全社方針が社内にある」とした企業が回答者の約7割に達した。だが、この内訳を詳しく見てみると、「全社方針があり、所属部門の方針に展開されている」が39.1%、「全社方針はあるが、企画・CSRなど主管部門の活動にとどまる」が24.9%、「全社方針はあるが、どう展開されているか分からない」が5.9%となっている。ここからは、回答者の約3割が「全社方針が社内にある」ものの、それを全社的な展開に結び付けらない様子がうかがえる。


「全社方針あり」が全体の約7割 出所:日本能率協会

 また、同アンケートでは工場や事業所でのエネルギー使用量やCO2排出量の見える化、CO2排出削減に向けた生産技術部門での取り組みも尋ねた。見える化については回答者の49.1%が「実施している」としたが、一方で、工場や事業所で取得したデータを基に省エネ活動に取り組む企業は13.0%にとどまった。生産技術部門における取り組みに関しては、「製品の軽量化/小型化」を挙げる声が最も多かったものの、実施企業自体は全体の19.5%にとどまり、決して大きな割合とはいえない数値だった。


「見える化」についてのアンケート調査[クリックして拡大] 出所:日本能率協会

「生産技術部門での取り組み」についてのアンケート調査[クリックして拡大] 出所:日本能率協会

 このことから、脱炭素に向けた指針を定めても、実際の対応策については詰め切れておらず、現場の施策につながっていない企業が多いのではないかと推測される。もちろん業種や企業規模によって、脱炭素に向けた取り組みの温度差はあるだろう。ただ、今後はただ方針を定めるだけでなく、具体的に削減目標を達成できているかが厳しく評価されることになりそうだ。具体的で現実的な目標設定に加えて、工場への太陽光パネルの導入など再生可能エネルギーの活用や、施設内へのLED照明導入による省エネ化施策の展開など、現時点で自社に何ができるかを検討する必要がある。

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