株式売却も日立との技術連携深める日立建機、DX基盤の構築で国内営業の革新へ:製造業がサービス業となる日(2/2 ページ)
日立建機と日立製作所は、日立建機がグローバルで展開する事業のDXを加速するための「DX基盤」を構築したと発表。その活用の第1弾となるのが、日立建機傘下で国内の建設機械の販売や部品・サービス事業などを担う日立建機日本の販売、サービス、レンタル、中古車の各担当者を対象に運用を始める「営業支援アプリ」である。
ITインフラ構築をコード化したIaCがもたらす「N倍化」
営業支援アプリを実現した日立建機のDX基盤は、日立がデータの利活用を迅速かつ安価にスタートすることを求める顧客向けに構築した仕組みがベースになっている。日立 サービス&プラットフォームビジネスユニット サービスプラットフォーム事業本部 IoT・クラウドサービス事業部 SaaSビジネス推進本部 担当部長の岡部大輔氏は「データは持っていても、その利活用に向けて何をしていいか分からないユーザーは多い。そこで、データ利活用に最低限必要なデータレイク、データ管理、API管理の機能をユーザー側の環境準備が不要なSaaSで提供できるようにした。その上で、さらに踏み込んだデータ利活用に向けたユーザー独自領域のPaaSも用意している。このSaaSとPaaSの組み合わせをパブリッククラウド上で運用し、データ利活用とDXの推進を支える」と述べる。
日立建機のDX基盤の場合、SaaSはユーザー管理機能をメインで利用し、営業支援アプリが取得することになるさまざまなデータを扱うデータレイクや、AIコンサル機能と連携するAI分析機能などはユーザー領域となるPaaS上に展開している。先述したGlobal e-ServiceやConSite、さらにはICT施工ソリューションの「Solution Linkage」などとの連携も可能だ。
これらDX基盤の環境構築では、ITインフラ構築をコード化するIaC(Infrastructure as Code)と呼ぶ手法を用いている。これによって、コード化された構成情報を再利用して同一の構成を簡単に作成できる。日立が目指す「社会イノベーション事業の推進」では、事業をスケーリングする「N倍化」を重要視しているが、このIaCはDX基盤のN倍化を実現するものといえる。
また、日立建機のDX基盤は、顧客に関わる機微な情報にアクセスできる営業支援アプリとつながることを考えればセキュリティの確保も重要になってくる。これについては、ITインフラの構築、運用に関する日立のノウハウを基にしたセキュアな構成をIaCとしてコード化するとともに、さまざまなデータアクセスコントロール技術を組み合わせて安全性を担保している。
営業一人一人が顧客に寄り添うコンシェルジュへ
2022年1月14日に発表された、日立の日立建機株式の譲渡により、今後日立建機は日立の子会社ではなくなる。ただし、日立の持ち分法対象企業としての関係性は残るため、日立建機は、日立ブランドの使用や、Lumadaをはじめとする日立との技術連携を継続する方針である。今回発表したDX基盤と営業支援アプリも、今後も両社が技術連携を深めていく姿を示す好例と言えそうだ。
日立建機 執行役 CDIO、DX推進本部長の遠西清明氏は「DX推進本部では、オペレーショナルエクセレンスになっていく、他社が模倣できない現場改革力を付けていくことを目標としている。そこで、今回の営業支援アプリなどで営業一人一人の力を引き出し、顧客に寄り添うコンシェルジュとなるよう、現場の日立建機日本と協力して取り組みを進めていきたい。また、これらの取り組みを進める上で、日立との協創活動は極めて重要なものになっている。Lumadaへの貢献と併せて、DX基盤やさまざまな支援ツールの開発を進めたい」と述べている。
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