IoTタグで「冷蔵庫の中身」を可視化、食品ロス削減目指す実証実験開始:スマートリテール
日本総合研究所は2022年1月11日、同社が設立した「SFC(スマートフードコンサンプション)構想研究会」の参画企業らで、生産者、小売店舗、消費者からなるフードチェーン各領域での食品ロス削減に向けた実証実験を開始すると発表した。IoT(モノのインターネット)タグなどの活用で、小売店舗だけでなく、消費者の自宅内でも食品ロス軽減に向けた取り組みを展開する。
日本総合研究所は2022年1月11日、同社が設立した「SFC(スマートフードコンサンプション)構想研究会」の参画企業らで、生産者、小売店舗、消費者からなるフードチェーン各領域での食品ロス削減に向けた実証実験を開始すると発表した。IoT(モノのインターネット)タグの活用で製品情報を可視化することで、小売店と消費者の自宅における食品ロスを減らすことを目指す。
IoTタグと重量センサーで在庫を可視化
今回の実証実験は、経済産業省の委託事業である「流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(IoT技術を活用した食品ロス削減の事例創出)」における成果の一部を活用する形で実施する。参画企業は日本総合研究所の他、イトーヨーカ堂、今村商事、サトー、シルタス、凸版印刷、日立ソリューションズ西日本の6社。実施場所はイトーヨーカ堂の曳舟店(東京都墨田区。以下、曳舟店)と消費者の自宅で、期間は最大で2022年1月12日〜31日と2月9日〜2月28日の合計40日間。
実験では生産者と小売店、消費者を対象に、タギングによる製品情報の取得と活用を通じた食品ロス削減の取り組みをそれぞれ展開する。大きく分けて3つの取り組みを実施する。
1つ目は、凸版印刷が展開するLPWA(Low Power Wide Area)通信規格であるZETAを活用したタグ「ZETag」による、青果物と収穫/出荷時情報のひも付けだ。生産者が収穫した際の野菜の品質や、色や形といった情報をシステムに入力すると、青果物を出荷する電子タグ付きコンテナにデータが結び付けられる。
これらの情報は曳舟店のデジタルサイネージや、店舗に設置されたQRコードを読み込んで使うスマートフォンアプリ上で確認できる。生産者や産地など、価格以外の製品価値を消費者に伝えやすくなることで、消費者に以前よりも柔軟で効果的な製品訴求が行える。結果的に食品ロス低減に貢献し得る可能性があるという。
2つ目は商品の賞味/消費期限に応じたダイナミックプライシングの実施である。曳舟店での製品入荷時に、賞味/消費期限のラベルを発行して製品に付与する。ラベルのデータから期限別の在庫データを可視化できるため、賞味/消費期限の近い製品は値下げするなど、期限に応じた価格設定が行える。価格変化は電子棚札でリアルタイムで確認可能。消費者が賞味/消費期限の「近さ」だけでなく、価格を基準に製品選びが行える環境づくりを目指す。
ダイナミックプライシングの実施例。製品に貼り付けられたシールと電子棚札のアルファベットは対応している。画像内の「A」の製品は賞味/消費期限が近いといった理由から、安く買えることを表している[クリックして拡大]
3つ目が、サトーが展開するIoTタグ「Wiliot IoT ピクセル」と重量センサーを組み合わせることで、消費者の自宅内にある製品在庫を可視化する取り組みだ。
Wiliot IoT ピクセルはシール型の電池レスIoTタグで、貼り付けた対象のさまざまな情報を取得できる。今回の実験では、消費者自身が購入した製品の外装にWiliot IoT ピクセルを貼り付けて、冷蔵庫に保管することで、製品の温度情報と、製品が庫内にあるかという2つの情報を集める。加えて、消費者が冷蔵庫から製品を取り出して使用した後に、キッチンに設置した重量センサーに乗せることで、製品使用量なども計測する。これによって冷蔵庫内の在庫情報を可視化する。情報は店頭でもスマートフォンアプリから確認可能で、無駄な買い物を防止する効果が期待できる。
また、在庫情報はクラウドに送信され、シルタスが開発した購買情報と連動する食事管理アプリ「SIRU+」などともリアルタイムで連携する。SIRU+は小売店で消費者がスマートフォンでスキャンした製品情報を基に、栄養診断を行うアプリである。例えば、消費者の冷蔵庫にキャベツが残っている場合、栄養面からおすすめのレシピを店頭で使えるクーポンと併せてスマートフォンアプリ上で提案する。
Wiliot IoT ピクセルを用いた実験は、男女合わせて100人の消費者モニターを対象に実施する予定だ。
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