血小板凝集塊の出現頻度で新型コロナの重症化リスクを予測:医療技術ニュース
東京大学は、新型コロナウイルス感染症の患者の約9割に、過剰な数の循環血小板凝集塊が存在することを発見した。その出現頻度は、重症度、死亡率、呼吸状態、血管内皮機能障害の程度などと強い相関が認められた。
東京大学は2021年12月9日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の約9割に、過剰な数の循環血小板凝集塊が存在することを発見したと発表した。循環血小板凝集塊の出現頻度は、重症度、死亡率、呼吸状態、血管内皮機能障害の程度などと強い相関が認められた。バージニア大学との共同研究による成果だ。
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COVID-19では、血栓症が重症度や死亡率の重要な要因の1つとされる。今回の研究では、東京大学医学部附属病院に入院したCOVID-19患者110人を対象に、その血液を調べた。患者から採取した血液をマイクロ流体チップ上で高速流体イメージングし、循環血小板凝集塊の画像ビッグデータを取得、統計解析した。
その結果、健常者と比較して、COVID-19患者の87.3%に過剰な数の循環血小板凝集塊が存在していた。その出現頻度と重症度、死亡率は、強く相関していた。
画像解析では、循環血小板凝集塊中の白血球の存在が、重症度や死亡率と関連していることも示された。これは、COVID-19における白血球機能の亢進、白血球の血栓症への関与に関する報告とも一致する。
循環血小板凝集塊の出現頻度と臨床検査データの比較では、全身の血栓形成や血管内皮障害とも相関関係にあることが分かった。これらの関連性は、肺における重度の血管内皮障害と肺胞毛細血管における広範な微小血栓に関する報告と一致する。
重症度別に出現頻度を経時的モニタリングしたところ、どの患者群も発症後3〜4日の出現頻度は中程度だが、その後から患者群ごとに異なる予後パターンとなった。一方で、退院のタイミングは全ての予後パターンで循環血小板凝集塊の出現頻度が低下していた。
なお、重症患者は発症後1週間で出現頻度がピークに達し、その後3週間にわたって低下せず、死亡または慢性期病院への転院となった。また、発症1〜9日目、発症10〜18日目の呼吸状態と循環血小板凝集塊の出現頻度には強い相関関係があり、循環血小板凝集塊がCOVID-19患者の呼吸状態を示す指標となり得ることが明らかになった。
これらの研究結果は、COVID-19における血栓症発症機序の解明や重症化リスクの予測、治療法の研究などの一助となることが期待される。
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