ソニーが6脚車輪ロボットを開発、車輪移動と脚移動で整地と不整地に両対応:ロボット開発ニュース
ソニーグループが不整地を安定かつ高効率に移動できるロボットを新たに開発。接地部分に車輪アクチュエーターを搭載した6本の脚構造を持つ「6脚車輪構成」のロボットで、平地では車輪移動を行い、階段などの段差の昇降では脚移動と車輪移動を併用する。整地と不整地が混在する環境でも、安定かつ高効率な移動を実現できるという。
ソニーグループは2021年12月14日、不整地を安定かつ高効率に移動できるロボットを新たに開発したと発表した。接地部分に車輪アクチュエーターを搭載した6本の脚構造を持つ「6脚車輪構成」のロボットで、平地では車輪移動を行い、階段などの段差の昇降では脚移動と車輪移動を併用。整地と不整地が混在する環境でも、安定かつ高効率な移動を実現できるという。同日から、清水建設と共同で、建設現場における巡回、監視などの施工管理業務の効率化を目的とした、同ロボットの実用化に向けた実証実験も開始している。
ロボットの開発を担当したのはソニーグループの研究開発組織であるR&Dセンターだ。採用された「6脚車輪構成」は、接地部分に車輪アクチュエーターを搭載した6本の脚構造を持ち、車輪アクチュエーターを駆動させる「車輪移動」と、6本の脚を交互に動かす「脚移動」をハイブリッドに行えることが最大の特徴になる。平地では車輪移動を行い、階段などの段差の昇降においては脚移動と車輪移動を併用することで、脚移動のみを行う場合よりも速く、かつ平地から段差へ移る際にも速度を保ちながら、効率的な移動が可能だ。また、6脚構成によって、機体と地面が常時3点で接する設計となっているため、整地、不整地を問わず、前後に揺動しない滑らかな重心移動を実現できるとしている。
これまでにソニーは、2021年9月27〜10月1日に開催された知能ロボットの学術会議「IROS(International Conference on Intelligent Robots and Systems)2021」で4脚歩行ロボットを発表している。今回の6脚車輪ロボットは、この4脚歩行ロボットの設計思想を継承し、機体の脚構造やモーターへの負荷を分散させるメカ構成を採用することで、最大20kgの高い可搬重量を実現した。また、ロボットが静止している際に必要な自重を支えるためのエネルギー消費量も削減できるため、高いエネルギー効率につなげられる。これらの特性により、重い荷物を運搬するだけでなく、360度カメラや測量機器などの機体への搭載も可能で、静止画と動画の撮影による巡回/監視作業や測距作業への応用が期待できるという。
さまざまな産業での実用化を想定しており、人と同じ空間で動作する場合でも、安全かつ安定した機体制御を自律的に行うことができるシステムを構築した。例えば、ロボットの関節部に掛かる力を柔軟に制御する独自の全身協調制御システムにより、路面が安定しない不整地を移動する際にも、動作を安定させられる。外部から力をかけられた際には、衝撃を最小限に抑えるために、自律的に力を逃がす方向に回避行動を行う。今後は、機体の安定制御に加え、移動経路の策定など、移動に関する自律性能の向上を目指した開発を進める。
脚移動の際には瞬間的に大電流が必要になるが、電気二重層キャパシター(EDLC)の搭載により大電流を流せるようにした。EDLCは、ハイブリッド車の回生ブレーキなどに用いられており、大電流の入出力が可能なことを特徴とする蓄電デバイスだ。このEDLCの搭載により、バッテリーのサイズを抑えたまま機体の小型化も実現できたとしている。今後は、さらなるバッテリーの効率化や機体の小型軽量化も進める考えだ。
6脚車輪ロボットの主な仕様は以下の通り。外形寸法は全長912×全幅672×全高730〜1220mm(脚車輪部に500mmの可変ストロークがある)。バッテリーを含めた総重量は89kg。可搬重量は最大20kgで、移動速度は最高で秒速1.7m(時速6.12km)。移動可能段差は30cm(一般的な建物の階段の段差は20cm前後)。連続稼働時間は4時間。自由度は、駆動軸が16軸(直動6軸、Hip回転6軸、駆動輪4軸)、受動軸2軸(独自開発シングルオムニホイール)。
清水建設とソニーグループによる実証実験は、清水建設が施工中の虎ノ門・麻布台プロジェクトA街区のタワービルで行われる。段差や開口、障害物などがある実際の建設現場で、ソニーのR&Dセンターが6脚車輪ロボットの検証機を動作させ、その性能評価および技術検証を実施する。期間は2021年11月〜2022年6月の予定。
ハードウェア面では、段差の昇降、狭小な経路の通過、水たまりや開口(穴)などの歩行不適な場所の回避、認識が難しいガラスやメッシュの壁面がある空間での適正移動、バッテリー性能などを、ソフトウェア面では、操作用タブレット端末によるロボット歩行経路の作成、ロボットによる測位、静的/動的障害物の回避動作の考案、機体に搭載したカメラによる撮影などの検証を行う予定だ。
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