自動化対応力を大幅に強化する横形マシニングセンタを開発:FAニュース
オークマは、□800mmパレットサイズの横形マシニングセンタ「MA-8000H」を発表した。人が意識することなく機械が自律的に省電力で稼働する機能や環境に配慮した技術を備えており、自動化対応力の強化、脱炭素化への取り組みを支援する。
オークマは2021年11月15日、□800mmパレットサイズの横形マシニングセンタ「MA-8000H」を発表した。人が意識することなく、機械が自律的に省電力で稼働する機能や環境に配慮した技術を備える。受注開始は2022年1月を予定する。
「サーモフレンドリーコンセプト」により、多くの電力を消費する特別な熱変位対策を取ったり、冷却装置、空調設備で細かく室温管理をする必要はなく、機械が自律的に安定した精度を維持する。暖機運転や寸法補正に必要な動作時間が大幅に短縮されるため、機械単体としての消費電力を削減する。
また、「新世代省エネルギーシステム ECO suite plus」では、加工で消費した電力量やCO2排出量をECO電力モニターで確認して分析することで、削減につなげることができる。
サーモフレンドリーコンセプトを応用した知能化省エネ機能「ECO アイドルストップ」を備え、冷却が必要かどうかを機械が自ら判断。高精度を維持したまま冷却装置をアイドルストップして、高精度と省電力を両立する。
労働生産性を高めるため、自動化対応力を強化。ワークを自動でクランプする治具類への油空圧供給ポート数を、段取りステンレス側は4ポートから16ポートへ、加工室側は4ポートから7ポートへと増強した。治具の単独動作を増やせるようになったことで、ロボットによる複数ワークの自動着脱や加工室内での工具と治具の干渉回避など、多様なニーズに対応可能になった。
機内に切粉が堆積しにくいカバー構成や切粉洗浄機能を強化し、機内の切粉を清掃する必要がなくなり、長時間の連続稼働が可能になった。
これまで人手に頼っていたクーラントタンクの清掃は、特別仕様の「スラッジレスタンク」により、タンク内に残留するスラッジを被削材が鋳物の場合は99%回収する。同社内設備で確認したところ、クーラントタンクの清掃および交換は3年間必要なかった。さらに、使用後は廃液となるクーラントの長寿命化を図り、環境負荷も低減している。
特別仕様の「AI加工診断機能」を搭載しており、加工状態を監視し、AI(人工知能)が異常を検知すると自動で工具を退避する。これにより、突発的な工具欠損を防止する。ワークへのダメージを未然に防ぐほか、復旧にかかる手間や時間を削減する。同社設備では、工具寿命が1.3倍〜2.2倍となり、24カ月間工具が破損しなかった。
基本性能も強化した。X、Y、Z軸の各移動量全てを100mm拡張し、加工エリアを27%拡大。重量ワークにも対応する。従来機MB-8000Hとの比較では、設置床面積が95.5%と省スペース化し、最大積載質量は20%向上して3000kg(特別仕様)に対応する。
幅広い素材に対応するころ軸受を主軸に採用し、高効率な加工ができる。また、標準で「主軸内クーラント吸引」を採用。工具の残留クーラントを瞬時に除去する。
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