工作機械のCO2排出量削減に貢献する省エネ機能強化、自社工場内で30%削減効果も:FAニュース
オークマは2021年11月2日、工作機械の省エネ機能「ECO suite」を強化し、「ECO suite plus」として新たな機能を加えて展開することを発表した。国際的な脱炭素社会への移行に向けた動きに対応し、CO2排出量分析機能を追加した他、自律的なアイドルストップ機能や使用エネルギーを最適化した加工などを実現する。
オークマは2021年11月2日、工作機械の省エネ機能「ECO suite」を強化し、「ECO suite plus」として新たな機能を加えて展開することを発表した。国際的な脱炭素社会への移行に向けた動きに対応し、CO2排出量分析機能を追加した他、自律的なアイドルストップ機能や使用エネルギーを最適化した加工などを実現する。
脱炭素社会への移行に向け温室効果ガス排出量削減への動きが加速する中、各企業では温室効果ガス(GHG)算定プロトコルで定められたサプライチェーン全体の炭素排出量削減へのアクションが求められる状況が生まれている。特に、Scope1(事業者による温室効果ガスの直接排出)とScope2(他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出)については、早期の実質ゼロ化が求められており、具体的な取り組みが必要とされている。
工作機械が使用するエネルギーは、顧客企業にとっては「Scope2」に相当するが、オークマではこれらの使用エネルギー削減に貢献するさまざまな機能を開発。省エネルギーシステム「ECO suite」として2001年から展開を開始した。NC制御装置(OSP)に標準搭載し、搭載機の出荷は累計約5万6000台に及ぶという。
「ECO suite」には、加工終了後に不要な冷却ユニットから順にアイドルストップする「ECO アイドルストップ」、加工中の周辺機器(ミストコレクタ、チップコンベヤーなど)の運転を制御する「ECO オペレーション」、オペレーターの省エネへの意識向上のため、補機や主軸、送り軸の電力を常時見える化する「ECO 電力モニタ」、自社開発のサーボ制御技術を応用した省エネ油圧ユニット「ECO ユアツ」などの機能が搭載されている。
新たに開発した「ECO suite plus」は、さらに3つの機能を強化した。1つ目が、改善サイクルにつながるCO2排出量分析の実現である。「ECO 電力モニタ」の機能に新たに加えた。これは、「ECO アイドルストップ」「ECO オペレーション」を活用し、消費電力およびCO2排出量の削減につながる個々の機器の電力使用量を個別に確認し、記録を管理できる機能で、日常的により詳細な各機器の電力使用状況などを把握することで、工場内での脱炭素化の具体的なアクションにつなげられるようにする。
また、ネットワークを利用した外部出力機能なども強化し、オフィスのPC上でのCO2排出量確認や分析を容易に行える。電力と同様、CO2排出量についても自動換算を行い、常時表示し脱炭素化への活動指標として使用できる。
2つ目が、人が操作することなく機械が自律的に判断するアイドルストップ機能だ。「ECO アイドルストップ」機能に追加する。加工工程だけでなく、機械操作、保全作業中を含めた工作機械を使用する全てのシーンで、操作状況を自動で検知し、アイドルストップや復帰動作を完全自動化する。オペレーターが意識することなくCO2排出量の削減を進めることができる。
3つ目は、生産性を維持しながら最小限のエネルギーでの加工を実現する加工最適化機能の強化である。「ECO オペレーション」の強化となる。電力使用量の大きいミストコレクタなどの機器に対し、さらにきめ細かい運転パターンのチューニングを行うことで、生産性を損なわないCO2排出量の削減活動を支援する。「電力モニタ」機能で記録、分析した結果に基づき、各補機の運転をコントロールし、消費電力やCO2の削減につなげる。
これらの活用により、オークマ自社工場内に設置された門形マシニングセンタでCO2排出量30%削減につなげた実証結果も得られたとしている。
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