ファイバーレーザーマシンで鋼材加工の働き方改善へ、アマダが新製品投入:FAニュース
アマダマシナリーは2021年11月18日、中厚板大板材の高速ピアス加工と高品位切断加工を実現するファイバーレーザマシン「LC-VALSTER-AJ」シリーズを発売すると発表した。
アマダマシナリーは2021年11月18日、中厚板大板材の高速ピアス加工と高品位切断加工を実現するファイバーレーザーマシン「LC-VALSTER(バルスター)-AJ」シリーズを発売すると発表した。同年11月19日から受注を開始した。
薄板材でのファイバーレーザーの実績を中厚板材に
アマダグループでは、アマダにおいて薄板材向けのファイバーレーザーマシンなどを展開し販売を伸ばしているが、レーザー発振器を含むレーザー関連技術の進化が進んだことにより大出力化に成功。これらを生かして、新たな市場開拓ができないかを検討し、今回新たに厚板材向けのファイバーレーザーマシンの投入を決めた。
アマダ 代表取締役社長 執行役員の磯部任氏は「アマダのファイバーレーザーマシンの投入は2010年が最初でその後世代を重ねることに進化してきた。もともと薄板材の加工が得意だったが、出力も10kWまでさせるようになり、30mmくらいの中厚板材まで加工できるようになってきた。そこで、アマダマシナリーが担ってきた厚板シャーリング市場、鉄骨ファブ業界などに、このアマダの強みであるファイバーレーザー技術を活用できないかを考えた」と述べている。
新たに投入する「LC-VALSTER-AJ」シリーズは、10kWの高出力発振器の搭載が可能で、高速高品位加工を実現するとともに、最新のNC装置や最先端の加工支援技術、IoT(モノのインターネット)を駆使することで誰にでも使いやすいマシンとなっていることが特徴だ。
10kWの高出力発振器と「モードコンバーター」を組み合わせることで、高速ピアス加工と高品位加工を併せて実現。ファイバーレーザー発振器の高出力化に伴い新たに中厚板加工向け長焦点レンズ用の加工ヘッドを開発し、電力効率よく高出力での加工を可能としている。また、大板材用のパレット上でも、俊敏に軸移動が行えるフライングオプティクス方式(光走査式)を採用することで加工時間を短縮し生産性の向上を実現している。
中厚板材の溶断ではプラズマ切断などが用いられているが、同社の試験結果では、プラズマ切断の作業時間に比べて1.3〜1.8倍の生産性向上が見られたという。また、ファイバーレーザーの強みでもある加工精度などの面でも優位性を発揮し歩留まりは約40%向上、材料コストの削減などの効果も得られたとしている。
一方、環境面などの法規制による後押しもある。2018年12月にJASS6による建築工事標準仕様が改定され、レーザーによる穴あけが可能になったことに加え、2021年4月に、プラズマ切断などで発生する金属粉塵が法規制の対象となり「構機・鋼材業界においてファイバーレーザーマシンによる中厚板大板材の切断加工に期待が高まっている」とアマダマシナリー 代表取締役社長の田所雅彦氏は語る。
これらのニーズに応え、「LC-VALSTER-AJ」シリーズでは、フルパーテーションや新集塵システムを搭載することで、材料の切断時に発生するヒューム(有害物質)を外部へ飛散させず、加工現場の環境面や安全性を向上させている。これにより、構機・鋼材業、厚板シャーリング市場、鉄骨ファブ業界、建産機、特殊車両業界など幅広い業界への提案を進めていく考えだ。
新製品は、加工サイズが3.0×1.5mの「LC-VALSTER-3015AJ」と6.2×2.5mの「LC-VALSTER-6225AJ」の2機種を用意。レーザー発振器の出力は3kW、6kW、10kWを展開する。価格は「LC-VALSTER-6225AJ」で、レーザーや周辺機器を組み合わせ1億4000万円を想定している。販売目標は「2022年度で年間30台を目指す」(アマダマシナリー 田所氏)としている。
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