東芝がインフラサービスとデバイスを独立分社「解体ではなく未来に向けた進化」:製造マネジメントニュース(3/3 ページ)
東芝が、インフラサービスとデバイスの事業を分離独立し、3つの独立会社に分割する方針を説明。東芝本体には東芝テックとキオクシアを残し、エネルギーシステムやインフラシステムなどをインフラサービスカンパニーに、半導体とHDDなどのデバイス系の事業をデバイスカンパニーに移管。2023年度下期を目標に2社の分離独立と上場を完了させる。
「東芝にとって絶対的に正しいステップ」
綱川氏は、分離独立する事業の選定理由について「ビジネスサイクルや、製品・サービスの価格設定、契約形態、設備投資などの観点で、インフラサービスとデバイスのビジネス特性は大きく異なる。このため2つの事業に分けることを決めた」と説明する。特に、インフラサービスはビジネスサイクルが長期にわたり、設備投資が事業規模に対して少額であるのに対し、デバイスはビジネスサイクルが短期で、半導体の大口径化や微細化などの設備投資が多額になる点などが強調された。
さらに、分離独立を行う理由として、株主価値向上との関わりが深い「価値の顕在化」「株主への選択肢の増加」とともに「専門的かつ俊敏な経営」を挙げた。そして、この「専門的かつ俊敏な経営」に向けて、分離独立する2社それぞれが「深い業界知識と明確な成長戦略を持つ取締役と執行役の選定」「社外からの人材起用も含めて新たな経営体制の構築」「マネジメント階層の削減による、より迅速な意思決定の実現」「必要に応じて潜在的戦略パートナーを独自に選定」といった経営体制の改善を進める。
3つの独立会社に分割する方針を決めた戦略委員会の委員長を務めるポール・ブロフ氏は「この分離計画は東芝の進化における大きな転換点になる。戦略委員会は、徹底的かつ客観的なプロセスを経てこの結論に達した。これは東芝にとって絶対的に正しいステップであり、新たな価値創造への道を歩むためのエキサイティングで活気に満ちた、そして重要な一歩になると確信している」と強調する。実際に、今回の発表と併せて東芝の株主に向けて送られた戦略委員会によるスピンオフ計画に至るプロセスを説明するレターでは、投資会社によるマイノリティー出資、非上場化などとともに検討した結果、3つの独立会社への分割が最善と判断したとしている。
今回の3社分割案では、持ち株会社制とは異なり、基本的に3社の間に直接の資本関係は存在しないことになる。このため、東芝直下の研究開発本部が中心になって進めてきた研究開発体制については大幅な変更を行う必要がある。綱川氏は「基本的に、現在の研究開発のリソースを3社それぞれに適正に分割して、それぞれで推進していくことになる。ただし、基礎研究については何らかの工夫が必要になるので今後決めていきたい」と述べる。また、新たな研究開発体制で、これまでのような東芝の技術力を維持できるかについては「2社の2021〜2023年度の研究開発費は売上高比率で従来比1〜2ポイント増やしており、より強化する方向になっている」(東芝 代表執行役副社長の畠澤守氏)という。
東芝本体に残る東芝テックの処遇については「何も決まっていない」(綱川氏)ものの「同社の持つデータはデジタル化に向けて欠くことのできない事業だと思っている」(同氏)とした。東芝テック以外の東芝本体の事業としてはブランド管理などがあるが、詳細は今後詰めることになる。
綱川氏は、報道陣からの「総合電機メーカーとしての事業継続を諦める事実上の解体ではないか」という質問に対して「もうテレビも家電もPCもないわけで、総合電機メーカーという感覚はない。現在の強みであるインフラサービス、デバイスという2つの事業に分割するが、これは解体ではなく未来に向けた進化だ」と述べている。
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