バネやゴムを使わずに防振機能を埋め込める設計ソリューション「DFM PULSE」:メカ設計ニュース
Nature Architectsは、バネやゴムなどの部材を用いることなく振動を抑制できる防振設計ソリューション「DFM PULSE」を発表した。木材、金属、ガラス、樹脂といったさまざまな材料に対して、適切な形状を設計、加工して埋め込むことで、防振機能を付加できる。
Nature Architectsは2022年11月12日、バネやゴムなどの部材を付加することなく振動を抑制できる防振設計ソリューション「DFM PULSE」を発表した。
DFM PULSEは、木材、金属、ガラス、樹脂といったさまざまな材料に対して、適切な形状を設計、加工して埋め込むことで、防振機能を生み出す防振設計ソリューションである。
従来の防振技術のように、バネやゴムを用いたり、組み立て工程を増やしたりすることなく、少ないスペースに対して、シームレスに防振機能を埋め込むことができる。例えば、モーターやスピーカー、モビリティ、電子基板など、さまざまな部材やプロダクトに対して適用可能だという。
DFM PULSEは、次の3つのコア技術によって支えられている。1つ目は、振動源、プロダクトに使用される材料、構造を埋め込む空間、製造制約などの情報から、最適な構造を設計するソフトウェア技術である。2つ目は、意図しないサージング(※注1)を発生させない構造データベース。3つ目は、従来防振が困難であった超低周波/低マウント荷重の振動を抑制する構造データベースである。
※注1:サージングとは、防振材の1次共振周波数以降で共振が発生し、防振対象周波数領域において、意図しない振動が発生する現象のことを意味する。
一般的に防振に用いられるコイルバネはサージングが発生するため、ゴムなどの減衰の強い材料と複合して使用されている。これに対して、同社はさまざまな材料で幅広い周波数帯域においてサージングが発生しない「ダンパーレスバネ」を生み出した。また従来、超低周波/低マウント荷重の振動を抑制するためには、複雑な部材の組み立てが求められる大規模な防振機構が必要だったが、同社はシンプルな防振構造によって低周波/低マウントの振動を抑制する技術を確立しているという。
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