インラインでの全数自動検査を可能に、従来機比1.5倍高速な3D X線基板検査装置:FAニュース
オムロンは2021年11月10日、CT型X線自動検査装置「VT-X750-V3」を同年11月20日からグローバルで発売すると発表した。電子基板を3D検査するフル3D-CT型X線自動検査装置として「世界最速」(オムロン調べ)の高速性能を備えているという。
オムロンは2021年11月10日、CT型X線自動検査装置「VT-X750-V3」を同年11月20日からグローバルで発売すると発表した。電子基板を3D検査するフル3D-CT型X線自動検査装置として「世界最速」(オムロン調べ)の高速性能を備えているという。
従来機比1.5倍の高速化でインラインでの全数検査が可能に
オムロンでは検査に関わる全てのノウハウや無駄を排除する「Triple Zero」の実現を目指しており、無人検査システムの実現に向けてさまざまな機器を展開している。基板検査装置では、外観検査(AOI)、X線透過検査(AXI)製品を展開し、グローバルでも大きなシェアを握っている。
5GやEV(電気自動車)、自動運転などで使用される電子基板の需要は急増する一方で、多層化や両面実装、集積化などの高度化が進んでおり、品質を確保するにはより高精度で、高速で検索できる検査装置が求められていた。しかし、高精度化が可能な3D検査は撮像と画像処理に時間がかかり、生産品の全数ではなく一部のみの検査であったり、全数検査を行うために生産工程から離れた場所に置いた検査工程で、時間をかけて対応したりするケースがあった。
そこで、新製品「VT-X750-V3」では、現行モデルより検査速度を1.5倍に高速化することで、複雑な基板でも全数検査を可能としたことが特徴だ。車載用で一般的に使用されているMサイズ基板(330mm×250mm)であれば、全面を約20秒で検査できる。これは、主に車載用基板実装ラインのサイクルタイムに近い数値であり「ほぼ全ての工程でインラインでの全数検査が行えることになる。従来モデルでも約半数はインラインで使用されているが、実装基板が高度化する中で難しい場面もあった。その点を解決した」(オムロン)としている。
高速化を実現できた要因として、X線カメラの性能向上と動作制御の向上がある。実装基板の3D X線検査は、X線カメラを円を描くように動かして撮影することで、360度のさまざまな角度からの2D画像を撮影し、これらを合成し3D画像を作る。このX線カメラの性能を向上させ、感度とフレームレートをそれぞれ2倍にすることで、カメラを速く動かしても、感度不足で精度の高い映像が取れなかったり、フレームレートの不足でコマ落ちが起きたりすることなく、3D画像が作れるようになった。また、両面実装などの場合は、複数の視点で円を描くような撮影を行う必要があるが、そのポイント間の移動などの制御性能を高めることで高速化を可能としている。
精度についても、新たなCTアルゴリズムを採用したことでノイズを低減でき、より正確な検査を行える。また、実装基板の検査だけでなく、パワーデバイス向けの検査でも使用可能としている。デバイスの検査工程では、検査ポイントとなる特徴点の設定などが難しいが、検査ロジックの改善を行い、ボイド検出精度などを高めている。検査ロジックについてはさらに拡張を進め、EVモジュール検査、アセンブリー工程での検査、2次電池の検査などを増やしている。
X線検査装置の課題でもある被ばくリスクの低減についても強化している。高速化により被ばく量を従来機比で44%削減している他、部品ごとの被ばく量を正確にシミュレーションする機能を追加し、X線被ばくによる基板上の部品故障を低減する。
新製品の価格はオープン価格だが「仕様に幅があるが5000万〜6000万円を想定している」(オムロン)。オムロンでは、車載向けは5Gインフラ向けなどの高品質な基板実装を行う分野を対象に、初年度に300台販売することを目指している。
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