パナソニック新潟工場の現場を変えた、たった4人の「からくり改善」【後編】:メイドインジャパンの現場力(32)(4/4 ページ)
たった4人で始めた同好会からスタートし、「からくり改善」により次々に成果を生み出しつつあるのが、パナソニック エレクトリックワークス社 新潟工場である。同社の「からくり改善」を活用した現場改善への取り組みを紹介する。後編では、実際に導入された「からくり改善」装置とその効果についてお伝えする。
8本分のストックで自動化を支援する「からくり改善」装置
自動化支援の面で大きな効果を生み出しているのが、作品名「からくりインバータ」である。
これはLEDベースライトの生産ラインで使われているものだ。従来は自動生産設備に対し、カバー部品の供給を人手で設備のタイミング(約3秒に1回)に合わせて投入していた。しかし、連続供給の途絶えや投入するカバー部品の台車交換作業によるロスなどが発生しており、月間で8.5時間程度のロスが生まれていたという。
これを「からくり改善」装置を使うことで最大8本分を自動供給できるようにし、最大約30秒間の余裕を作業者に与えることで、供給漏れや台車交換ロスなどを抑えられるようにした。ポイントはカバーを供給するベルトコンベヤーの動力を使い、カバーの送りを実現する一方で、後が崩れないようにバランスを取るための2カ所のストッパー機能を活用しているという点だ。
「ロボットによる自動供給などを考えがちな場面だがロボットを導入すると1000万円単位のコストがかかる。今回の装置は12万円で実現できた。ただ、これだけでも年間で102時間、1988万円のロス改善を実現できている」と徳吉氏は語る。
現場の小さな改善を現場主導で
この他にもパナソニック エレクトリックワークス社 新潟工場では「からくり改善」装置を導入しており、トータルで7種類10台を活用している。また、新潟工場のからくり改善分科会が主導し他の工場で使用する「からくり改善」装置の開発なども行っており、今後もさらに拡大を進めていく方針だ。
ここまで見てきたようにこれら1つ1つの「からくり改善」装置で得られる改善効果は工場全体に大きな影響を及ぼすほどのものではないかもしれないが、積み上げていくことで大きな価値を生んでいる。また、現場の小さな困りごとを現場主導で解決し、そして直接的に負荷軽減につながるという意味では大きな意味を持つ。
徳吉氏は「作った『からくり改善』装置は導入後3年以上がたつものもあるがほとんど壊れていない。大規模な仕組みや設備がなければできない自動化ではなく、軽い現場発のやり方でも半自動化できるやり方があれば選択肢は大きく広がる。現場からの反応も良く、改善の内容が次々に挙がってきているので、それに応えていく」と今後の取り組みについて語っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- パナソニック新潟工場の現場を変えた、たった4人の「からくり改善」【前編】
たった4人で始めた同好会からスタートし、「からくり改善」により次々に成果を生み出しつつあるのが、パナソニック エレクトリックワークス社 新潟工場である。同社の「からくり改善」を活用した現場改善への取り組みを紹介する。 - 素材から組み立てまで、パナソニック照明工場がスマート化に向かう理由
蛍光灯からLED照明へ変遷する照明器具。その中で、パナソニックの照明設備を製造する中心工場の1つが新潟工場である。同工場はパナソニック内のスマートファクトリーモデル工場の1つとなっており、スマート工場化を推進している。新潟工場の取り組みを紹介する。 - マツダのからくりを通じた人づくり、工場は創意工夫と成長の場
工場では多品種化と生産性向上の両立が求められており、そこでは人がより効率よく安全に作業するための工夫も欠かせない。マツダは長年からくりを活用した作業改善に力を入れてきた。同社がからくりを用いた改善に取り組む理由を聞くとともに、「からくり改善(※)くふう展2018」(主催:日本プラントメンテナンス協会)に出品された同社の作品の一部を紹介する。 - 製造業をカイゼンできるのはIoTだけじゃない、“からくり”がもたらす安全と効率
ロボットを導入するのは難しいが、手作業では効率化や安全性に課題がある……生産ラインのそんな困りごとを解決するのが「からくり」だ。動力に頼らず、ワークの自重やシンプルな動きを利用することで、安全に効率を高められる。知恵と発想がつまったからくりの数々を紹介する。 - 「からくり改善」で躍進、重力と知恵で実現する自動化で年率30%成長
工場の自動化ニーズが高まる中、安価で作業負荷を軽減できる“からくり”への関心が高まっている。その“からくり”を支援して年率30%成長を見せているのがアルミフレームを提供するSUSである。同社の“からくり”の提案を取材した【訂正あり】。 - スマート工場は“分断”が課題、カギは「データ取得」を前提としたツールの充実
工場のスマート化への取り組みは2020年も広がりを見せているが、成果を生み出せているところはまだまだ少ない状況だ。その中で、先行企業と停滞企業の“分断”が進んでいる。新型コロナウイルス感染症(COVID−19)対応なども含めて2021年もスマート工場化への取り組みは加速する見込みだが、この“分断”を解消するような動きが広がる見込みだ。 - スマートファクトリー化がなぜこれほど難しいのか、その整理の第一歩
インダストリー4.0やスマートファクトリー化が注目されてから既に5年以上が経過しています。積極的な取り組みを進める製造業がさまざまな実績を残していっているのにかかわらず、取り組みの意欲がすっかり下がってしまった企業も多く存在し2極化が進んでいるように感じています。そこであらためてスマートファクトリーについての考え方を整理し、分かりやすく紹介する。