サプライチェーン混乱もなんのその、オムロンが変化対応力で過去最高の営業利益:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
オムロンは2021年10月28日、2022年3月期(2021年度)第2四半期累計(4〜9月)の業績を発表した。サプライチェーンの混乱やコロナ禍によるロックダウンの影響などを大きく受けたが、強化してきた変化対応力を発揮し、大幅な増収増益を実現。2021年度通期業績見通しも上方修正した。
ソリューションシフトが大きな成果を生む制御機器事業
セグメント別では、特に主力となる制御機器事業(IAB)が好調で、全地域で売上高伸長を達成した。コロナ禍からの回復傾向を鮮明に示した。山田氏は「全地域でコロナ前の水準を超える見通しだ。日本は回復まで少し時間がかかると見ていたが、日本もデマンドが強まってきている。リスクはあるが需要の底堅い状況は当面続く」と見通しについて語っている。
さらに、IABが好調な要因として山田氏は「ソリューション中心のビジネスモデルへと転換を図ってきたことが着実に成果につながっている」と強調した。同社では制御機器の単品販売ではなく、顧客の課題解決につながるソリューション提案を強化。課題解決をより容易に実現するため、製品を組み合わせて典型的な実践的アプリケーションを顧客企業と共に数多く構築してきた。取り組み開始時の2017年度は約50個のアプリケーションを用意していたが、2021年度現在でこの数は230個以上となっている。これらの価値を示すように、アプリケーションを活用できる高機能PLCの採用社数は着実に増加。導入が増えるにつれて、アプリケーション採用も含めた売上高成長につなげることができている。「理想的な成長が始まっている」と山田氏は訴える。
また、高成長領域での投資が活発に進んでいることも追い風となった。例えば、自動車業界ではEV(電気自動車)向けの生産設備の投資などが好調である他、デジタル分野では半導体や二次電池関連設備への投資が続いている。また、食品/日用品/医薬品の領域では、包装機械への投資が進んでいる。「これらの成長領域での需要増を粘り強い取り組みで着実につかむことができた。高成長領域における2021年度上期の売上高成長率は39%増となっている」(山田氏)。
収益力と変化対応力に成長力が掛け算
これらの好調を受けて2021年度通期見通しも上方修正した。売上高は前回予想比800億円増の7800億円、営業利益は同280億円増の980億円、当期純利益は同175億円増の655億円を予想する。これにより「譲渡した車載機器事業を除いた数値で見ると、売上高と当期純利益は過去最高を更新することになる」(山田氏)としている。
セグメント別では制御機器事業とヘルスケア事業では、過去最高の売上高と営業利益となる見込みだ。山田氏は「高めてきた収益力と変化対応力に、成長力が掛け算として効いてきている」と手応えを強調した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- オムロンが協働ロボット事業強化、テックマンに出資し2024年度に売上高2〜3倍へ
オムロンは2021年10月26日、ロボット事業の強化に向け台湾の協働ロボットメーカーであるTechman Robot(以下、テックマン)に出資することを発表した。出資額はテックマンの全株式の約10%で、これによりオムロンの制御機器と一元的な制御が可能な新たな協働ロボットの共同開発を進め、2023年に発売する計画だ。 - オムロンは売上総利益率が過去最高へ、ロボットとの統合制御機器で成長加速
オムロンは2021年1月27日、2021年3月期(2020年度)第3四半期の業績を発表するとともに、業績に大きく貢献する制御機器事業とヘルスケア事業の方向性について説明を行った。中国市場の期待以上の需要増とともに、制御機器事業のソリューションビジネス化、ヘルスケア事業の血圧計需要の増加などの好影響から、2020年度第3四半期(2020年4〜12月)は増益を実現し、通期見通しも上方修正を行っている。 - 設定工数を70%削減し目視工数を85%削減、品質向上支援も行うAI基板外観検査装置
オムロンは2021年8月2日、AI(人工知能)関連技術や独自の照明技術を活用し、設定工数の大幅削減や、不良の原因究明に貢献する基板外観検査装置「VT-S10シリーズ」を同年8月5日からグローバルで発売すると発表した。 - オムロンの協働ロボット、空圧の“手”との連携が容易に
オムロンは2020年11月9日、協働ロボット「TMシリーズ」用周辺機器群「Plug&Play」に新たに、空気圧制御機器大手のSMCとCKDが参加し、空気圧駆動のグリッパーをラインアップとして追加したことを発表した。 - スマート工場は“分断”が課題、カギは「データ取得」を前提としたツールの充実
工場のスマート化への取り組みは2020年も広がりを見せているが、成果を生み出せているところはまだまだ少ない状況だ。その中で、先行企業と停滞企業の“分断”が進んでいる。新型コロナウイルス感染症(COVID−19)対応なども含めて2021年もスマート工場化への取り組みは加速する見込みだが、この“分断”を解消するような動きが広がる見込みだ。 - スマートファクトリー化がなぜこれほど難しいのか、その整理の第一歩
インダストリー4.0やスマートファクトリー化が注目されてから既に5年以上が経過しています。積極的な取り組みを進める製造業がさまざまな実績を残していっているのにかかわらず、取り組みの意欲がすっかり下がってしまった企業も多く存在し2極化が進んでいるように感じています。そこであらためてスマートファクトリーについての考え方を整理し、分かりやすく紹介する。