三菱重工の江波工場がGoogle Cloudを採用、コロナ禍契機に新たな技術基盤構築へ:スマートファクトリー(3/3 ページ)
グーグル・クラウド・ジャパンがオンラインで会見を開きクラウドプラットフォーム「Google Cloud」の製造業向けの取り組みについて説明。マネージド機械学習プラットフォーム「Vertex AI」が高い評価を得ており、会見にはユーザーである三菱重工業 江波工場の担当者が登壇しVertex AIをはじめGoogle Cloudの活用法を紹介した。
Google Cloud採用の決め手は「文化面での親和性を感じた」
労働集約型作業の効率化では、WebカメラによるOPE(Overall Production Effectiveness)自動取得の取り組みを進めている。OPEとは、設備効率の指標であるOEE(Overall Equipment Effectiveness)の手作業版ともいえるものだ。これまで、技術者の作業効率と関わりの深いOPEや現場離脱分析は、これもまた人手となる現場観測者が行っていた。しかし人手では、リソースが限られる上にリアルタイム性も得られない。そこで、WebカメラとVertex AIを組み合わせることで、OPEと現場離脱分析をリアルタイムに行えるようにしたという。三菱重工業 民間機セグメント エアロストラクチャー事業部 工作部 工務課の松田達也氏は「Vertex AIの機能を活用して、計測対象とすべき作業員だけを追跡できるようにした。2人で行う作業でもそれぞれをきちんと切り分けて追跡できている」と述べる。
さらに、熟練作業者の作業内容の可視化を目指して動画を基にした骨格分析も行ったという。「しかし骨格分析だけでは難しい面も多く、そこで動画に対する音声分析も組み合わせることで良い成果が得られた」(松田氏)という。
松田氏は、Google Cloud採用のメリットとして、生産量の少ない航空機を手掛ける江波工場から得られるデータサンプル数でも高精度な機械学習モデルを実装できること、クラウドで構築したAIモデルをエッジデバイスで動作させられること、「Cloud SQL」や「Big Query」の利用によるデータのシームレス活用が可能なこと、データ収集から運用まで機械学習ワークフローの効率化が可能なMLOpsに対応することなどを挙げた。
さらに、もう1つ重要なポイントとなったのが、Google Cloud社員とのディスカッションやデザイン思考の実践などを通じてイノベーションプロセスを体感する「re:workプログラム」の存在だ。松田氏は「Google Cloudのre:workプログラムと三菱重工が2018年から取り組んできた風土改革の取り組みが非常にうまくギアが合い、文化面での親和性を感じた。面白いことがやっていけるのではないかと思った」と述べている。
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