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「現場」起点で融合、パナソニックとブルーヨンダーが歩むサプライチェーン改革製造マネジメントニュース(2/2 ページ)

パナソニックの新たな事業会社の1つ「パナソニック コネクト」となる予定のパナソニック コネクティッドソリューションズ(CNS)社の戦略について2021年10月22日、同社社長の樋口泰行氏、同社上席副社長の原田秀昭氏、2021年9月に買収が完了したBlue Yonder CEOのGirish Rishi(ギリッシュ・リッシ)氏が、報道陣の合同取材に応じた。

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パナソニックとブルーヨンダーがもたらす新たな価値

 パナソニックとブルーヨンダーでは2021年9月の買収手続き完了後、「100日プラン」として具体的に融合への仕組み作りを進めているところだ。インテグレーションチームを作り、経営戦略だけでなく人事、経理、技術開発、全ての職種で統合への取り組みを進めている。

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パナソニック コネクティッドソリューションズ社 上席副社長の原田秀昭氏

 それでは、両社の一体化によりどのように新たな価値が生まれるのだろうか。統合を推進する原田氏は「協業も含めると3年半の期間があり、その間にさまざまなPoC(概念実証)を進めてきた。これらは出資比率の壁などがあり、うまくいかない面があったが、現在は100日プランの目玉として、パナソニックの画像認識技術とブルーヨンダーのソフトウェアを組み合わせたソリューションを提供できるように進めている」と語る。

 パナソニックはメーカーとしてハードウェアの開発ができる他、さまざまなセンシング技術や画像認識技術を保有しており、フィジカルなエッジ(現場)の世界をバーチャルの世界にデータとしてつなぐ技術を数多く持つことが特徴だ。一方でブルーヨンダーは、サプライチェーンにかかわる、モノの移動や保管の管理に特化しており、パナソニックのさまざまな技術を活用することで、従来はデータとして得られなかった物理世界の情報をリアルタイムで収集することができ、新たな価値提供を生み出せる可能性がある。

 その中でまず相乗効果が期待できるのが顔認識技術を含む画像認識技術とブルーヨンダーのソリューションとの組み合わせである。ポイントは、パナソニックの画像認識技術もソフトウェアだという点だ。「ソフトウェア同士を組み合わせることで、さまざまな価値が生み出せる。例えば、現在ブルーヨンダーが実現している、輸送トラックや飛行機のリアルタイム情報を含めたサプライチェーン管理をさらに進め、倉庫の人の動きなどをリアルタイムで把握し最適化するような仕組みを作ることができる。パナソニックの画像認識技術を組み合わせることでブルーヨンダーのソリューションとしての競争力も高めることができる」と原田氏は述べている。

 また、リッシ氏も「パナソニックもブルーヨンダーもマイクロソフトのパートナー企業であり、オープンなAPI(Application Programming Interface)などもある。さまざまなアプリケーションをインタフェースを通じて融合させやすい環境にある。IoT(モノのインターネット)や画像認識技術、モバイルデバイスなどを通じて得られた情報をクラウドベースで連携させる。そうした情報から得た知見を現場にフィードバックし、結果を出すということが重要だ。例えば、小売店の棚情報の管理なども画像認識技術を組み合わせることでできる」と語っている。

脱炭素でも価値を発揮

 また、脱炭素についてもブルーヨンダーのソリューションは大きな価値を生むという。パナソニックでは、GHGプロトコルにおけるスコープ1、スコープ2の範囲において、2030年に全事業会社でCO2排出実質ゼロの実現を目指した取り組みを進めているが、2050年までにはサプライチェーンや自社製品の生み出す排出も対象としたスコープ3までを含めたバリューチェーン全体CO2排出量を、商品やサービスを通じた「削減貢献量」が上回る状態にする方針だ。

 この「スコープ3」での実現を目指すためには「削減貢献量を高める」という取り組みが重要になり、これにブルーヨンダーのソリューションが大きく役立つという。原田氏は「モノづくりにおいて、工場の省エネ化などには多くの企業が取り組んでいるが、工場間の輸送や物流などについてのエネルギー使用の低減については、まだまだ対策を打てる余地がある。リアルタイムでのモノの輸送管理を行うことで、物流の最適化などにより、大幅にCO2排出量削減などが行える可能性もある。こうした既に、脱炭素の観点でのブルーヨンダーの機能強化についても話し合いを進めている」と語っている。

リカーリングビジネス強化の位置付け

 ただ、基本的には完全子会社化以降も基本的にはブルーヨンダーの独立運営の方向性は変わらない。樋口氏は「CNS社として考えてきたのは、大量生産モデルとしての考えを脱却し、長続きする成長エンジンを作り、それを受け継いでいくということだ。そのためにはクラウドベースのリカーリング型のビジネスを広げていくということが基本的な方向性になる。そういう意味では、ブルーヨンダーは既にサブスクリプション型で重視される経営指標の年間経常収益(ARR)が5億ドルもあり、今後に向けて収益を生み出し続けるビジネスモデルを提供してくれたといえる。高い買い物だといわれてきたが、無理にパナソニックとの相乗効果を作り出さなくても、戦略的な目標は達成できている」と位置付けについて語っている。

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