半導体イノベーションを支えるのは先端技術だけではない:アプライド マテリアルズ ブログ(2/2 ページ)
米国の大手半導体製造装置メーカーであるアプライド マテリアルズ(Applied Materials)のブログの抄訳を紹介する本連載。今回は、同社のMaster Classイベントの開催と絡めて、ICAPS(IoT、通信、自動車、パワー、センサー)分野の動向について紹介する。
シリコンカーバイド:大口径ウエハーへの移行にはイノベーションが必要
筆者の同僚であるアプライド マテリアルズのLlew Vaughan-Edmundsが先日当社のブログで書いている通り、車の電動化は全世界の輸送業界に変革をもたらしつつある。そして、自動車に搭載される半導体チップの数や種類も劇的に変化している。今日の電気自動車(EV)に搭載される半導体の価額をエンジン車と比較すると既に倍近い開きがあり、2030年までにはこれがさらに倍増する可能性もある。先進運転支援システム(ADAS)のレベルが進むにつれて、チップのニーズも高度化するからだ。デバイス面ではシリコンカーバイド(SiC)-MOSFETが今後ますます重要な役割を果たすとみられ、その用途はEVの配電ユニットやレギュレーターからモーターを動かす高圧トラクションインバータモジュールまで多岐に及ぶ。SiC-MOSFETはスイッチングが高速で、しかも高い電圧と電流を処理できるため、モーター駆動システムの小型・軽量化の他、EV航続距離の延長にも寄与する。
SiCパワーデバイスへの需要が急増する中、半導体メーカーは150mmウエハーから200mmウエハーへの移行を加速し、ウエハー1枚から取れるダイの数をほぼ倍増させたいと考えている。その際、マテリアルズ エンジニアリングにおける課題が2つ出てくる。SiCウエハーの表面品質と、電子移動度だ。SiCは元来シリコンよりも強固だが、自然欠陥があるとデバイス材料の格子構造に乱れが生じ、電気性能や電力効率、信頼性、歩留まりが劣化しやすくなる。SiCのウエハー基板上にはエピタキシーによってさらにSiC層が成膜されるので、ウエハーの表面品質は極めて重要となる。表面に何らかの欠陥があると、これが上の層にも伝播してデバイスに影響を及ぼすからだ(図2)。この非常に硬い材料の表面をほぼ無欠陥の状態に仕上げることが課題となるが、アプライド マテリアルズは未処理のSiCウエハー表面を製造工程用に最適化する先進的なマテリアルズエンジニアリング ソリューションを開発している。
さらにSiC材料をパワーデバイスとして機能させるためには、設計者の意図通りに電流が流れるようイオン注入を行う必要がある。しかしここでもSiC材料の固さと格子の完全性要件がネックになり、シリコンウエハーで使われるイオン注入や拡散などの手法を用いるのは簡単ではない。これに向けた新しいソリューションについては、Master Classで詳しく紹介する。
これら2つのユースケースが示す通り、ICAPS市場の鍵はマテリアルズエンジニアリングの新しいイノベーションにある。アプライド マテリアルズは、数十年にわたるあらゆるノードとウエハーサイズでの経験があるため、ICAPS分野でお客さまのイノベーション加速を支援できるユニークな立場にある。個別プロセスでのリーダーシップと協調最適化されたインテグレーテッド ソリューションを組み合わせることで、お客さまの実現を後押ししたいと考えている。
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