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半導体イノベーションを支えるのは先端技術だけではないアプライド マテリアルズ ブログ(1/2 ページ)

米国の大手半導体製造装置メーカーであるアプライド マテリアルズ(Applied Materials)のブログの抄訳を紹介する本連載。今回は、同社のMaster Classイベントの開催と絡めて、ICAPS(IoT、通信、自動車、パワー、センサー)分野の動向について紹介する。

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本記事は「Applied Materials Blog」の抄訳です。



 アプライド マテリアルズは米国時間2021年9月8日に同年3回目となるMaster Classイベントを開催する(編注:本抄訳の公開時点でイベントは終了している)。今回は、当社の重要な成長分野であるICAPS(IoT、通信、自動車、パワー、センサー)、ならびにヘテロジニアスデザインと先進パッケージングがテーマだ。本ブログではこのイベントのICAPSに関する部分をプレビューし、アプライド マテリアルズがICAPSビジネスグループを設立した背景を説明するとともに、ICAPSデバイスのPPACt(消費電力、性能、面積当たりコスト、市場投入までの期間)改善に寄与する2つのイノベーション例を紹介する。

⇒連載「アプライド マテリアルズ ブログ」のバックナンバー

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※写真はイメージです[クリックで拡大]

 アプライド マテリアルズは2019年、独自のテクノロジー要件を持つ特定の垂直市場に向けて社内のあらゆる技術を統合活用する水平的ビジネスユニットとして、ICAPSを立ち上げた。ICAPSは前述の通り、IoT(モノのインターネット)、通信(Communications)、自動車(Automotive)、パワー(Power)、センサー(Sensors)の頭文字からなる。私たちが利用する製品や私たちを取り巻く世界は年を追うごとにスマート化し、ますます多くの半導体が必要となっているが、需要の大半を占めるデバイスは、実は最先端のロジックやメモリではない。現在では農場や工場、オフィス、家庭などにIoTデバイスが急速に普及しつつあり、これには組み込みロジックの他、RF通信チップ、パワーデバイス、CMOSイメージセンサー、MEMSデバイス、アナログ−デジタルコンバーターなどのICAPSコンテンツが数多く搭載されている。そうしたデバイスの多くはいまだに150mmないし200mmウエハーで作られている他、各種組み込みコンピューティングの作業負荷には28nm SoCなどの平面ロジックデバイスで十二分に対応できる。最先端ノードではないこうした技術を「旧ノード」あるいは「レガシーノード」などと呼ぶ向きもあるが、そうした呼称に反してICAPS市場では今、非先端技術のルネサンスともいうべきイノベーションが起こりつつあるのだ。

 世界のデジタル化が進むにつれ、ICAPSデバイスの役割は重要性を増す。先端ロジックやメモリがコンピューティングシステムの脳にあたるとすれば、ICAPSデバイスは目、耳、鼻、皮膚などに相当し、いずれもデジタル世界での生活には不可欠なのだ。

 さらに重要なのは、ICAPS市場に毎年優れた高機能のデジタルデバイスを投入し続けるにはマテリアルズ エンジニアリングが必要、という点である。例として、スマートフォンと自動車において将来の設計を左右する2つのユースケースを検討してみよう。

CMOSイメージセンサーのスケーリング継続にはマテリアルズエンジニアリングが必要

 CMOSイメージセンサー(CIS)アレイは、今日のスマートフォンやスマートカー用の各種カメラを機能面で支えている。45〜90nmノードで製造されるCISアレイ上には青・緑・赤の3個1組からなるピクセル(画素)数百万個が並ぶ。現行の画素は幅1μm足らず、深さ6〜10μm程度で、どれも隣り合う画素とは分離されている(図1)。

図1
図1 CIS アレイ内の各画素は、カラーフィルターを透過した光を拾う働きを担う。光が画素内のシリコン原子と結合された電子に当たると電子が解放されて画素の底に向かい、光信号として認識される

 CMOSイメージセンサーの解像度を高める従来の方法は、平面スケーリングプロセスを用いてフィーチャーを微細化し、単位面積内の画素数を増やす、というものだ。この製造方法の大きな難点は、十分なダイナミックレンジを維持しにくいことだ。ダイナミックレンジとは、極めて弱い光と明るい光を同時に捕捉する能力を指す。画素が微細化すると飽和が起きやすくなり、画像アーティファクト(視覚的な画像の乱れ)が生じかねない。

 スマートフォン用カメラの2D画素スケーリングを今後数プロセスノードにわたって継続するには、マテリアルズエンジニアリングのイノベーションを活用して新しいアイソレーションとパッシベーションの技法を実用化する必要がある。同じダイ面積に載る画素数が増えるとクロストークが発生しやすくなり、ピクセルノイズや画質劣化につながりかねない。画素間で信号を分離するにはディープアイソレーションのトレンチが必要だが、平面画素スケーリングが進むにつれてトレンチがより深く狭くなるため、アスペクト比が極めて高くなる。現在はアスペクト比が40:1程度だが、これが遠からず60:1ないし100:1になる可能性もある。

 アプライド マテリアルズはICAPS Master Classにおいて、分離トレンチのアスペクト比を高めて信号雑音比を改善し、画素スケーリングの継続を可能にするイノベーティブなソリューションを紹介する。

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