AIを悪用したディープフェイク映像を見分ける、自動判定プログラムを開発:人工知能ニュース
国立情報学研究所は、AIが生成したフェイク顔映像を自動判定するプログラム「SYNTHETIQ: Synthetic video detector」を開発した。判定映像のアップロードから判定結果の映像のダウンロードまで、全プロセスをWebAPIとして利用できる。
国立情報学研究所(NII)は2021年9月22日、AI(人工知能)が生成したフェイク顔映像を自動判定するプログラム「SYNTHETIQ: Synthetic video detector」を発表した。WebAPIとして利用できるため、AIを活用したAIaaS(AI as a service)の実現に寄与する。NII シンセティックメディア国際研究センター長の越前功氏らの研究チームが開発した。
NIIでは、AIを悪用して映像中の顔を他人の顔に置き換えるディープフェイク映像に対して、その真贋を判定する深層学習モデルを研究している。判定には大量データに基づく自動識別手法を用いるため、圧縮やダウンコンバージョンなどの処理が行われていても一定の信頼性を有する。
今回、他のアプリケーションへの導入を容易にするため、WebAPIとして利用可能なSYNTHETIQを開発。真贋を判定したい映像をサーバにアップロードし、判定結果を示した映像をダウンロードするまでの全プロセスをAPIから実行できる。これにより、従来ディープフェイク映像の判定に利用していた、複数の高度な深層学習技術が不要になった。
AI技術の発展に伴い、本物そっくりな顔映像、音声、文章といったシンセティックメディアを生成できるようになった。この技術は、社会を豊かにする一方で、詐称や情報操作に悪用される恐れもある。中でも、ディープフェイクが社会問題化していると、同センターは指摘する。
NIIは現在、SYNTHETIQの普及に向けてパートナー企業を募集中だ。具体的には、同プログラムを活用したサービスを展開可能な企業に対し、ライセンスの提供を想定している。
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