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社会から染み出るIoTデータを学術情報ネットワークと直結、モバイルSINETが始動研究開発の最前線

国立情報学研究所は、学術情報ネットワーク「SINET5」と国内3キャリアのモバイル通信環境を直結した新サービスとなるSINET「広域データ収集基盤」(略称:モバイルSINET)の実証実験を2017年12月21日に正式に開始すると発表した。

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 国立情報学研究所(以下、NII)は2018年12月20日、東京都内で会見を開き、学術情報ネットワーク「SINET5」と、国内3キャリア(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)のモバイル通信環境を直結した新サービスとなるSINET「広域データ収集基盤」(略称:モバイルSINET)の実証実験を同年12月21日に正式に開始すると発表した。実証実験の期間は2019年度末(2020年3月)まで。既に農林水産業、自然環境インフラ、医療/ライフサイエンス、社会システム、情報インフラなどの分野から28件の研究テーマが提案されており、今後も随時募集を掛けていく予定だ。

「モバイルSINET」の会見の登壇者
「モバイルSINET」の会見の登壇者。上段左から、アマゾン ウェブ サービス ジャパン パブリックセクター ソリューションアーキテクトの櫻田武嗣氏、佐賀IDC 営業部 チーフの塩谷有弘氏、NII 副所長の漆谷重雄氏、さくらインターネット 営業部 担当部長の滝島繁則氏、日本マイクロソフト 業務執行役員 パブリックセクター事業本部 文教営業統括本部 統括本部長の中井陽子氏。下段左から、NTTコミュニケーションズ 経営企画部 IoT推進室長の宮川晋氏、KDDI 理事 技術統括本部の宇佐見正士氏、NII 所長の喜連川優氏、ソフトバンク エンタープライズ第一営業本部 第二営業統括部 統括部長の高橋義典氏、NTT東日本 ビジネス開発本部 第一部門 基盤ビジネス推進担当部長の黒澤大志氏(クリックで拡大)

 SINET5は、国内の大学/研究機関などの研究教育活動を支える学術専用の情報通信ネットワークだ。全都道府県にSINETノードを設置し100Gbps回線で接続しており、海外とも100Gbpsで接続されている。国内全ての国立大学をはじめ900の大学、研究機関が加入しており、民間企業も大学などとの共同研究契約があれば利用できる。

「SINET5」の概要「モバイルSINET」の概要 「SINET5」(左)と実証実験を始める「モバイルSINET」(右)の概要(クリックで拡大) 出典:NII

 基本的に有線ネットワークであるSINET5だが、国内3キャリアのモバイル通信環境と直結してモバイル機能を拡張したのがモバイルSINETになる。SINET5とモバイル通信環境を直結した閉域網を構築することで、フィールド系の研究開発に必要なIoT(モノのインターネット)データをセキュアに扱える。加えて、SINET5でも採用しているL2VPN(Layer-2 Virtual Private Network)をモバイル通信環境にも適用しており、研究プロジェクトごとのセキュアな環境も構築できる。

28件の研究テーマ28件の研究テーマ 「モバイルSINET」で既に提案されている28件の研究テーマ(クリックで拡大) 出典:NII

 また、モバイルSINETでは、民間企業8社(NTTコミュニケーションズ、KDDI、ソフトバンク、NTT東日本、AWS(Amazon Web Services)、佐賀IDC、さくらインターネット、日本マイクロソフト)が提供するデータ処理環境を「アカデミック条件の低廉な価格」(NII 副所長の漆谷重雄氏)で利用できることも特徴となる。

「モバイルSINET」の実証実験で8社が提供するデータ処理環境
「モバイルSINET」の実証実験で8社が提供するデータ処理環境(クリックで拡大) 出典:NII

 今回の実証実験に参加する8社は、サービスを廉価に提供することで、大学や研究機関のIoTを活用した研究開発プロジェクトに参加し、その活用の仕方をレファレンスとしてノウハウを蓄積していく狙いがある。「IoTプラットフォームはまだ黎明期であり、大学や研究機関を含めてさまざまなお客さまと一緒に作り上げていく必要がある」(NTTコミュニケーションズ 経営企画部 IoT推進室長の宮川晋氏)という。

 モバイルSINETの実証実験に参加するには、NIIに申し込んだ上で、モバイルSINET用のSIMカードをキャリアから購入する必要がある。8社のデータ処理環境の利用については、3カ月、6カ月、1年など各社が指定する期間になる。

 NII 所長の喜連川優氏は「日本政府が推進する『Society 5.0』では、CPS(サイバーフィジカルシステム)をデータで駆動することが求められており、そのためにはIoTを活用して“社会全体から染み出るデータ”を収集、分析する必要がある。SINET5は世界でも先進的な学術専用の情報通信ネットワークだが、モバイル機能を取り込むことでIoTを活用する研究開発に対応していく」と語る。

「SINET5」へのネットワーク接続のハードルを下げる狙いも

 モバイルSINETの狙いは大まかに分けて2つある。1つは急速に拡大するIoT関連の研究や事業の取り込みだ。大学や研究施設の中で研究開発を行う場合、有線ネットワークである従来のSINET5は利用しやすい。しかし、大学や研究施設外のさまざまな現場のデータをIoTによって集める、農林水産業や自然環境/社会インフラ、医療/ライフサイエンスといった分野のフィールド系の研究開発では、SINET5を利用しやすいとは言いがたい。モバイルSINETとして、閉域の学術情報ネットワークにモバイル機能を取り込むことで、現場のデータをSINET5に直接取り込めるようになる。

 もう1つの狙いは、SINET5へのネットワーク接続のハードルを下げることだ。有線ネットワークであるSINET5と、大学や研究機関、企業を接続するには、専用の通信環境を構築する必要があり、それなりのコストがかかる。しかし、モバイルSINETは無線ネットワークによってSINET5に接続できるのでコストを大幅に削減できる。「2020年度からは、5Gの動向を見ながらモバイルSINETの拡張を検討したい」(漆谷氏)としており、SINET5の有線ネットワークによる100Gbpsには届かないものの、最大20Gbpsともいわれる5Gレベルの通信速度をモバイルSINETで得られる可能性もある。

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