変電機器のIoT化で特高変電所をリモート監視する実証実験を開始:製造IT導入事例
明電舎は、変電所を構成する変電機器のIoT化によって、特高変電所全体をリモート監視する実証実験を開始した。IoTやAIなどを導入することで、産業保安の安全性や効率性を高める「スマート保安」への対応を強化する。
明電舎は2021年9月2日、変電所を構成する変電機器のIoT(モノのインターネット)化によって、特高変電所全体をリモート監視するPoC(概念実証)を同年8月から開始していることを発表した。PoCは、同社初の実運用設備となる沼津事業所の特高変電所を対象に実施する。同変電所は主要設備の維持、管理に必要なデータを常時収集できる。
PoCの具体的な内容としては、変圧器やC-GIS(キュービクル形ガス絶縁開閉装置)、高圧盤、所内変圧器盤からメーター指示値や装置の入/切表示などのデータ収集、クラウドへの保存などを行う。この他にも、帳票作成や異常発生時のメール送信、グラフによる傾向分析などといった機能のサービス化についても検証する。
点検業務の省力化についても検証を行っている。複数のカメラやセンサーが収集したデータを活用することで、目視確認していた点検項目の83%を自動化、点検頻度の週次から月次への変更、点検帳票の自動作成など、年間の点検業務を9割削減することを目指す。日常点検や定期点検においてシステムが有効か、省力化の効果が見られるかを評価する。
明電舎は今回の実証実験により、IoTやAI(人工知能)などを導入することで、産業保安の安全性や効率性を高める官民連携の取り組み(「スマート保安」)を強化する。さらに、収集したデータを設備状態の診断機能に活用できるかを実証実験を経て確認し、その結果を同社の製品やサービスに生かしていく。
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