3D CADで思い描いた形状をうまく作るには?:テルえもんの3Dモノづくり相談所(3)(3/3 ページ)
連載「テルえもんの3Dモノづくり相談所」では、3Dモノづくりを実践する上で直面する“よくある課題”にフォーカスし、その解決策や必要な考え方などについて、筆者の経験や知見を基に詳しく解説する。第3回は「3D CADで形状を作っていく場合、どういう手順で作っていけばよいのか」をテーマに、その考え方や手順を伝授する。
続いて、作業する順番について考えます。マグカップの場合、カップに取っ手が付くものなので、(1)カップを先に作って、(2)取っ手を付けるという順番で作ることを考えます。作業の流れや作成する順番は、機能性や効率性を考えて優先順位を付けるようにしましょう。特にマグカップの場合、カップと取っ手の間に隙間ができないように作成する必要があるため、
- 取っ手を少し長めに作成しておき、後からはみ出した部分を削除する
- カップの中は最後に「シェル」でくり抜く
など、具体的なアプローチを検討します。ただし、カップに取っ手を付けた後にシェルをしてしまうと、取っ手の中までくり抜かれてしまうので、気を付ける必要があります。作業の順番を考える際は、あらかじめこのような点にも注意しておかなければなりません。
以上、3D CADでマグカップをモデリングする際に、筆者が頭の中で考えていることになります。ものによっては、とりあえず作りながら考えていくこともありますが、ここで紹介したように、ある程度、頭の中でイメージを固めてから3D CADに向かうことがほとんどです。
今回は、マグカップの“形状を作ること”を最優先に、筆者のモデリング思考を紹介しましたが、例えば「容量200ccのマグカップを設計する」となった場合には、先に容量となる形状を作成して、そこから外側に厚みを付けて形状を作るといったアプローチになるかと思います。このように、与えられた設計仕様によってモデリング手順も変わってくるということを覚えておいてください。
できるだけ基本形状に分解してモデリングするというのが、ベースとなる考え方ですが、基本形状に分解できないときはどうしたらよいでしょうか。その場合、「サーフェスモデリング」で作れないかを考えます。サーフェスモデリングとは、厚みのない、中身が詰まっていない、面データを作成する機能になります。線と線とをつなぐなどして曲面を作成しながら形状を作成します。また、最近ではCGソフトに近いイメージでモデリングできる機能を搭載した3D CADも増えています。粘土を手でこねるような感覚で、有機的な形状を作成できるのです。曲面のある形状を作る際の考え方についても今後の連載の中で紹介していきます。
上達するために必要なこと
3D CADを自由自在に操り、作りたい形状を素早く作れるようになるためには、やはり練習が必要です。スポーツと一緒で、日々のトレーニングが不可欠です。練習方法としては、自社製品を3D CADで作成してみたり、2D図面が手元にある場合には、図面を見ながら3Dモデルを作成したりなどがオススメですが、とにかく3D CADに触ることが重要です。
また、今回マグカップを例に説明しましたが、目の前にある身近なモノを見て、「3D CADで作るとしたら、どう作ろうかな?」と頭の中で考えてみるのも良いトレーニングになります。スポーツでいう「イメージトレーニング」と呼ばれるものですね。さらに、切削か板金か金型かといった加工方法や、材料、コストなどの観点も加味して考えてみると、より実践的なトレーニングになることでしょう。
もし、社内や身近に3D CADを使っている人がいるのであれば、作り方を教えてもらうのもいいでしょうし、作成した3Dモデルを見せてもらうだけでも良い勉強になると思います。もし、そうした人が身近にいない場合は、書籍やインターネット、YouTubeの動画コンテンツなどを探して、それらを参考にしてみるとよいでしょう。
いずれにしても、一朝一夕で3D CADを使いこなせるようにはなりません。ただ、日々3D CADに触って練習したり、イメージトレーニングしたりすれば、必ず使いこなせるようになります。諦めずにぜひ頑張ってみてください。今後の連載の中でも、3D CADを使用していく上でのコツや、3Dデータを活用したモノづくりについて、皆さんの参考になる情報を紹介していきますので、お楽しみに! (次回へ続く)
筆者プロフィール
テルえもん/本名:小原照記(おばら てるき)
いわてデジタルエンジニア育成センターのセンター長、3次元設計能力検定協会の理事も務める。3D CADを中心とした講習会を小学生から大人まで幅広い世代の人に行い、3Dデータを活用できる人材を増やす活動をしている。また企業の困り事に対し、デジタルツールを使って支援している。人は宝、財産であると考え、時代に対応する、即戦力になれる人財、また、時代を創るプロフェッショナルな人財の育成を目指している。優秀な人財がいるところには、仕事が集まり、人が集まって、より魅力ある街になっていくと考えて地方でもできること、地方だからできることを考えて日々活動している。
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