製造現場に広がる「画像」や「映像」の活用、何に生かすべきか:いまさら聞けないスマートファクトリー(12)(3/4 ページ)
成果が出ないスマートファクトリーの課題を掘り下げ、より多くの製造業が成果を得られるようにするために、考え方を整理し分かりやすく紹介する本連載。前回から製造現場でつまずくポイントとその対策についてお伝えしていますが、第12回では、スマートファクトリー化を進める中で活用が広がっている「映像」「画像」の使いどころについて紹介します。
ディープラーニングで広がる検査自動化の世界
実際に「画像」や「映像」の新しい使い方としては、どういうものがあるのでしょうか。
製造現場で「画像」や「映像」を新しく活用している領域ってどういうところがあるんですか。
工場の自動化などに貢献しそうなところで今変化が出てきているのは、まず「検査」の領域かしら。映像を使った「自動検査」の領域が大きく広がっているわ。
それはいいですね。検査工程はなんだかんだで人手による柔軟性に頼ってきたところがあって、機器を入れても人手作業を減らしにくいところでした。
検査工程でも以前から一部の製品や工程においては専用検査装置による自動化が進んでいます。しかし、画像の活用については、先述したようなパターン定義が行いやすいものに限られ、結果としてプリント基板や半導体など、似たようなものが大量に流れるような部材に限定されていました。
ただ、AIなども含む画像認識技術の発展により、複雑な立体物の中間検査や、筐体などの外観の品質検査なども自動化できるようになってきました。ロボットアームとカメラを組み合わせた独自の検査装置なども広がりを見せています。また、検査用に並べ直す作業などもモノによっては低減でき、その面での負荷低減にも貢献すると見られています。
もう1つ、検査領域でディープラーニングが期待されているのは「虚報」による負荷の削減です。これは画像に限った話ではありませんが、従来のルールベースによる検査では、条件を甘くすれば不良品を見逃す可能性があり、厳しめに設定しているところがほとんどです。しかし、条件を厳しく設定すれば、本来は良品であっても、検査で引っ掛かる「虚報」が発生します。
製造工程ではこうした「虚報」対策として、検査で不良品としてはじかれたワークを人手で再検査し、問題なければラインに戻すという作業をしていますが、この領域で人手を減らすことができずに苦戦する話をよく聞きます。ディープラーニングの活用で良品でありながらも検査ではじかれたものを学習し直すことで「虚報」を減らすことができ、この領域での作業負担を低減できると見られています。
こうした取り組みは、さまざまな工場で進んでいます。また検査機器メーカーや機械メーカーでもこうした動きを取り入れ、AI機能搭載の専用検査装置や、カメラを内蔵し簡単な検査機能を組み込んだ機器なども登場してきています。新たな技術の発展が新たな製品ジャンルの開拓や融合を推し進めているといえるでしょう。
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