コロナ禍に苦しんだパナソニック松岡氏、「Yohana」でウェルビーイングの実現へ:製造業がサービス業となる日(2/2 ページ)
パナソニックは、主にワーキングマザーを対象に家族を含めた私生活のウェルネスの充実を支援するパーソナルアシスタントサービス「Yohana Membership」の提供を開始した。サービス料金は月額149米ドル。まずは米国シアトルでサービスの体験利用の案内を始めている。
松岡氏「コロナ禍で全く生活をコントロールできなくなくなった」
“Yohana”の名前は、松岡氏の米国での愛称であるYokyの“Yo”と日本語の“花”をつなげた造語である。花は、人に贈るもの、あるいは人から頂くものであり、暖かさ、幸せ、楽しいといった感情が出るものだ。この花を人に贈る、人から頂くという「心のゆとり」「幸せな気持ち」を世の中の人々に提供し、働く親たちのウェルビーイングを実現したいという思いが込められている。
メディアの合同取材に応じた松岡氏は「パナソニックに入社してから間もなく、現在も続くコロナ禍が始まった。それまでは、4児の母親、妻、高齢の親を持つ娘、そして山ほどある会社の仕事、それぞれを何とかこなしていたが、コロナ禍で全く生活をコントロールできなくなくなった。ワーキングマザーとその家族をはじめ、多くの人が同じ経験をしているだろう」と語る。実際に松岡氏は、それまで務めていたHPの社外取締役も退任せざるを得なかったほどだ。
そこで松岡氏は、このような人々のつらい状態の解決と家族のウェルビーイングに向けて、得意とする最先端のテクノロジーと人間を融合したソリューションの開発に取り掛かった。その成果の端緒となるのが、Yohana Membershipのサービスである。
Yohana Membershipは既に約1年間のβテストを行っており、タスクをどのように解決していくかの方向性も見いだしつつある。今回は、30〜40歳代のワーキングマザーのニーズに合うような形でサービスを絞り込んで提供する方針だ。「新しいサービスは、ターゲットを絞って、絞って、始めた方がより良い成果が得られる」(松岡氏)。
サービス価格は月額149米ドル、1日当たり換算で約5米ドルだ。競合するパーソナルアシスタントサービスと比べても安価な設定とした。松岡氏は「通常のパーソナルアシスタントサービスは、時間当たり、タスク当たりなどで価格設定をしているが、それだと毎日たくさんあるタスクについて料金を気にすることなく解決を依頼できない。Yohana Membershipは月額費用をいただければ、そういった制限を気にせず、Unlimtedにタスク解決を依頼できる」と説明する。
安価な価格を実現した背景には、Yoアシスタントが判断したタスクの課題解決を実際に担う、「Yoネットワーク」に参加するプロフェッショナルや専門業者からのコミッション(販売手数料)がある。「これらのプロフェッショナルや専門業者が現在利用している紹介サービスは登録料が必要だが、Yoネットワークは登録料不要でYohana Membershipのユーザーとの間で業務が成約した時にだけコミッションをいただく内容になっている」(松岡氏)という。
今回のYohana Membershipでは、パナソニック製品をはじめ同社事業と直接的な連携を行うわけではない。松岡氏は「まずは米国市場向けにYohanaのサービスを展開しリードしていきたい。その後から、パナソニックの製品やサービスなどとのコラボレーションにスケールできるだろうと考えている。実際に、アプライアンス社やライフソリューションズ社との協力も進めているところだ。今回は小さな発表だが、夢は大きい」と述べている。
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