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AIで自動運転が可能な遠心分離機制御システムを開発、熟練技術者の操作を再現FAニュース

遠心分離機製造販売の巴工業は2021年7月27日、デカンタ型遠心分離機をAIで自動運転制御するシステム「セントニオ(CentNIO)」を発売したと発表した。

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 遠心分離機製造販売の巴工業は2021年7月27日、デカンタ型遠心分離機をAIで自動運転制御するシステム「セントニオ(CentNIO)」を発売したと発表した。

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巴工業のデカンタ型遠心分離機(クリックで拡大)出典:巴工業

 遠心分離機は、遠心力により比重差のある処理物を分離する機器であり、公共下水場での汚泥脱水処理や工場廃液の処理の他、化学、食品分野、最近では半導体や太陽電池向けの砥粒回収、さらにバイオマス分野などで広く利用されている。巴工業は国内大手の遠心分離機メーカーである。

 巴工業の主力製品であるデカンタ型遠心分離機は、安定的に連続運転を可能とするために、動作の上限および下限値の余裕(閾値)を大きめに設定する必要があった。しかし、余裕を大きめに設定することで運転にロスが生じる課題を抱えていた。そこで巴工業は2018年から、熟練のオペレーターが現場で細かな操作をするのと同じ状況を24時間作り出すことを目指し、AI(人工知能)を活用した自動運転制御システムの開発を進めてきていた。

AIで熟練技術者の設定を再現

 今回開発したセントニオは、このAI活用による自動運転制御を実用化したものとなる。具体的には、分離した処理物の画像や各種センサーの数値を基にAIが自律的に遠心分離機の運転制御を行う。センサー数値や処理物の画像を常時監視し、AIがデカンタで分離された脱水固形物の含水率や分離液濃度を推測。それを要求仕様値と対比して必要な操作因子の変更を判断し運転に反映する。さらに、操作因子の変更によって得られる処理結果の変化を予測し、実際の処理結果の変化とその予測の差異を踏まえた上で要求仕様値を満たすための運転制御を継続する。要求仕様値を安定的に満たす状況になるとAIは最適化運転を行うよう制御するようになり、例えば含水率のさらなる低減や、要求仕様値を満たしたまま処理量を最大化するなどの、あらかじめ設定した優先項目に従って能力の限界に近い運転状態を続ける。こうした制御は従来のシステムでは不可能だった。

 この他、AIの特性を変更できる独自の機能を備えており、優先項目をユーザーが微調整することも可能だ。再学習を繰り返すことで予測精度もより向上する。巴工業 代表取締役社長の山本仁氏は「AIの再学習を行うことにより、現場の作業者が持つ操作技術をセントニオが習得し、運転操作を代行することが可能となる。それにより、人手不足や技術継承の課題が解消される」としている。

 こうした機能の搭載により、遠心力が最適化され消費電力が削減される他、添加剤などの注入率最適化によるコスト低減が図られ、処理量最大化による生産性の向上を実現する。さらに、AIと遠心分離機の通信には有線、無線LANや携帯電話回線を使用。外部ネットワークとの接続により、遠隔地からの制御やモニタリング、気象情報を運転条件に反映することも可能とし、人手不足の解消や労働環境の改善にも寄与する。「これまでの研究結果で、廃水処理での使用の場合、廃棄物処理費ベースで当社従来制御システムと比べて約11%の処分費用が削減できる。生産プロセスでは同じく6%の生産性が向上する」(巴工業)。セントニオは新規購入のデカンタ型遠心分離機だけでなく、既設の同製品に増設することも対応している。

 巴工業は2021年5月に創業80年を迎え、これを機に遠心分離機のAI制御を業界に先駆けて積極的に推進していく方針である。そのため、オリジナルナビゲーションキャラクターの「フューミー(Fumee)」なども用意し、認知度の向上を図る。これらの取り組みを通じ、セントニオを3年後に約10億円の売り上げとすることを目標に掲げている。また、技術面では将来的にはナビゲーターと対話するだけでデカンタ遠心分離機の運転制御が可能になる姿を描き、開発を進めているという。

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山本氏とナビゲーションキャラクターのフューミー(クリックで拡大)

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