1.6リッターターボと4WDで白熱したWRCは、PHEVと合成バイオ燃料で新時代へ:モータースポーツ超入門(8)(3/3 ページ)
最高速度は時速200kmを超え、ドリフトしながらコーナーを駆け抜ける。コースによってはジャンピングスポットも存在し、レーシングカーが空を舞う姿は圧巻だ。大自然の中も疾走するのがWRCの醍醐味(だいごみ)であるだけに、来シーズンからはプラグインハイブリッドシステムを採用するなど環境技術の導入も推し進めている。自動車の環境調和と持続可能性を追求する、「WRC新時代」がやってくる。
こうした車両規則の変遷を経て、1997年からWRCのトップクラスとして歴史を紡いできたWRカーだが、2022年シーズンからは名称を「ラリー1」に改め、新時代に突入することになる。地球温暖化問題を背景にカーボンニュートラルの実現に動きがグローバルで進む中、WRCも環境に配慮したパワートレインなどを採用する予定だ。
2022年から新ルール、PHEVとバイオ燃料が活躍
ラリー1規定では、大手サプライヤーであるシェフラー傘下のコンパクト・ダイナミクスが供給するプラグインハイブリッドシステムを全マシンが搭載する。既存の排気量1.6lの直列4気筒直噴ターボエンジンに出力100kWのモーターと3.9KWhのバッテリーを組み合わせた新しいパワートレインとなる。
このシステムは回生ブレーキとして減速時に失われるエネルギーを電気として回収するだけでなく、電気をバッテリーにためてモーターでアシストすることで燃費を向上し、「電気ブースト」としてパフォーマンスアップにも使われる。SSとSSの移動区間であるリエゾンでは電気駆動でマシンを走らせ、マシン整備を行うサービスパークで充電できるようにする予定だ。ラリー1の下位クラスとなる「ラリー2」も電動化が進む。ラリー2ではリチウムイオン電池とスタータージェネレーターを組み合わせたマイルドハイブリッドシステムが搭載される予定になっている。
また、ラリー1ではさらなる環境対応として100%持続可能な合成バイオ燃料を使用することも決まっている。英国のP1レーシング・フューエルズが2024年末までの3年間に渡り、化石燃料を使わない炭化水素ベースの燃料を供給する。
2022年シーズンは1973年にWRCが誕生して50周年の節目の年を迎える。この記念すべきシーズンからプラグインハイブリッドシステムとサスティナブルな新燃料を導入し、環境時代のモータースポーツにふさわしい新生WRCが幕を開ける。
現在、自動車メーカーとして参戦するのはトヨタ自動車、現代自動車(ヒュンダイ)、フォードの3社のみ。環境対応につながる新たなラリー1規則を導入することで、CO2削減に強い意欲を見せる欧州自動車メーカーの復帰を促すことが期待されている。
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