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ディーゼル、ダウンサイジングターボ、HV……パワートレインのトレンドを映すWECモータースポーツ超入門(3)(1/2 ページ)

F1、世界ラリー選手権(WRC)とともに国際自動車連盟(FIA)が統括する世界選手権が、世界耐久選手権(WEC)だ。フランスで毎年行われる「ル・マン24時間耐久レース」(以下、ル・マン)」を含むレースカテゴリーで、2020年9月に開催された今年のル・マンでは、トヨタ自動車が3年連続の総合優勝を果たしている。

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 F1、世界ラリー選手権(WRC)とともに国際自動車連盟(FIA)が統括する世界選手権が、世界耐久選手権(WEC)だ。フランスで毎年行われる「ル・マン24時間耐久レース」(以下、ル・マン)」を含むレースカテゴリーで、2020年9月に開催された今年のル・マンでは、トヨタ自動車が3年連続の総合優勝を果たしている。

 来シーズン(2020/2021年)からはレース専用スポーツカー「LMP(ル・マン プロトタイプ)」に代わり、市販車ベースの「LMH(ル・マン ハイパーカー)」が最高峰クラスになることが決まっており、ハイブリッドシステムも搭載可能な市販ハイパーカーによる新たな戦いが始まる予定だ。

→連載「モータースポーツ超入門」バックナンバー


2020年のル・マンではハイブリッドシステムを積むトヨタガズーレーシングの「TS050ハイブリッド」8号車が優勝。トヨタはル・マン3連覇を達成した(クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

WEC最大のイベントがル・マン24時間耐久レース

 世界耐久選手権の歴史は古く、1953年の世界スポーツカー選手権にさかのぼる。「国際メーカー選手権」(1968〜1971年)、「世界耐久選手権」(1981〜1985年)、「世界スポーツプロトタイプカー選手権」(1986〜1990年)などとシリーズ名称を変え、その都度レギュレーション(規則)に改正を加えながら、1992年までの40年間開催してきた。現在のWECはこれらを前身とし、2012年にシリーズがスタートした。

 シリーズ戦として組み込まれない時期があったものの、WECで最大のイベントとなっているのがル・マンだ。米国で行われる「デイトナ24時間レース」、ベルギーの「スパ・フランコルシャン24時間レース」と合わせて世界3大耐久レースと呼ばれている。

 ル・マンの第1回大会が開催されたのは1923年のこと。長い歴史と伝統を持つレースであり、世界中の自動車メーカーがこぞって参戦してきた。その目的の1つが技術開発だ。ル・マンは自動車メーカーが新しい技術を試す場としての歴史を紡いできたと言っても過言ではない。

3社が異なるパワートレイン技術で競った、2014〜2016年シーズン

 自動車産業の行方や時代を映し出す鏡といえるのが、パワートレインだ。2012年からスタートしたWECでは、CO2排出規制といった地球環境問題への高まりを背景に、パワートレインの多様化を進める自動車メーカー各社の主力技術が実践投入された。

 パワートレイン技術競争の象徴となったのが、アウディ、ポルシェ、トヨタ自動車が三つどもえの戦いを繰り広げた2014〜2016年シーズンだった。WECのトップカテゴリーであるLMP1クラスにおいて、アウディはディーゼルエンジン、ポルシェはダウンサイジングターボエンジン、トヨタはハイブリッドシステムを投入。エネルギー回生システムと組み合わせ、各社独自のパワートレイン技術を競い合った。

 アウディがWECで初めてディーゼルエンジンを登場させたのは2006年のことだ。排気量5.5l(リットル)のV型12気筒ディーゼルツインターボエンジンを「アウディR10 TDI」に搭載した。TDIはTurbocharged Direct Injectionの略で、フォルクスワーゲン(VW)グループのクリーンディーゼルエンジンの総称として使われている。ル・マンでは2006年以降、TDIを搭載したアウディのレーシングカーが8度の優勝を飾った。レギュレーションに合わせて仕様変更を加えながら、ディーゼルエンジンの技術力、競争力の高さを誇示してきた。

 ただ、アウディは2016年シーズンをもってWECから撤退。そのきっかけとなったのが、皮肉にも技術に磨きをかけてきたはずのディーゼルエンジンだった。それまでディーゼルエンジンの優位性をモータースポーツで訴求してきたが、2015年に北米で発覚したVWグループのディーゼル排ガス規制に対する不正問題が発端となり、イメージが急激にダウン。2006年から一貫してディーゼルエンジンで戦ってきたWECからも撤退することになった。

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