新型コロナウイルスのデルタ株は、日本人の免疫から逃れる変異を持つ:医療技術ニュース
東京大学は、新型コロナウイルスのデルタ株とイプシロン株に共通する変異が、日本人に多く見られる細胞性免疫「HLA-A24」から逃れることを発見した。さらに、ウイルスの膜融合性を高めることで、感染力が増強する。
東京大学は2021年6月16日、懸念すべき新型コロナウイルスの変異株が、日本人に多く見られる細胞性免疫「HLA-A24」から逃れることを発見したと発表した。同大学医科学研究所 准教授の佐藤佳氏が主催する研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan」による研究の成果だ。
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HLA-A24はヒト白血球高原(HLA)の1種で、日本人の約60%が保有する。今回の研究では、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の感染受容体結合部位が、HLA-A24により強く認識されることを実証した。
また、75万配列以上の新型コロナウイルス流行株の配列解析から、2020年にデンマークで流行したY453F変異と、世界中で流行が続くデルタ株(インド株)とイプシロン株(カリフォルニア株)のL452R変異というアミノ酸変異を見出した。これらの変異では、HLA-A24に認識されるスパイクタンパク質の部位で変異が生じていることを確認した。
Y453F変異とL452R変異は、どちらも新型コロナウイルスの感染受容体に結合する領域における変異だ。流行中のL452R変異は、HLA-A24からの逃避に加え、感染受容体のACE2への結合性を高める。さらに、ウイルスの膜融合性を高めることで、感染力が増強することが分かった。
現在、イプシロン株は減少傾向にあるが、懸念すべき変異株として注目されるデルタ株は2021年6月時点で世界的に流行している。HLA-A24は多くの日本人が持っている免疫型であり、デルタ株が日本人や日本社会にとって他の変異株と比べて危険である可能性が示唆された。
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