手乗りサイズのGaNモジュールを富士通ゼネラル子会社が開発、EV補機向けにも展開:電動化(2/2 ページ)
富士通ゼネラル傘下の富士通ゼネラルエレクトロニクスが米国トランスフォーム製のGaN-FETチップを採用した最大定格650V/40A級の小型GaNモジュールを開発。200Vクラスを上回る高耐圧で、ゲートドライブ回路を内蔵するとともに、パワーデバイスを4素子以上搭載するフルブリッジ構成のGaNモジュールは「業界初」(同社)だという。
2029〜2030年に売上高100億円を目指す
富士通ゼネラル 経営執行役常務で富士通ゼネラルエレクトロニクス 社長の岡田雅史氏は「2018年からトランスフォームと共同して、パワーエレクトロニクス製品の大幅な小型化や高効率化が実現可能なGaNモジュールの開発を進めてきた。今回の小型GaNモジュールのサンプル出荷を皮切りに、2025年ごろに起こることが予測される、GaNやSiC(炭化シリコン)など次世代パワー半導体へのシフトを捉えて行きたい」と意気込む。
実際に、2029年にはGaNとSiCのパワーデバイスの世界市場規模が5000億円に達するという調査結果もある。この5000億円のうちGaNデバイスの市場規模は1300億円あり、ディスクリート(個別半導体)が700億円、今回発表した小型GaNモジュールと同じモジュールが600億円を占める見込みだ。富士通ゼネラルエレクトロニクスは、2029〜2030年のGaNモジュールの売上目標として、市場全体の6分の1となる100億円を掲げている。
想定する主な用途は、小型産業用ロボットのインバーター、再生可能エネルギーシステムのパワーコンディショナー、産業機器やデータセンター向けの電源、そしてEV(電気自動車)の補機用を挙げる。富士通ゼネラルエレクトロニクス 市場開発推進統括部 市場開発推進室 室長代理の松崎顕氏は「大電力向けに最適なSiCに対して、GaNはスイッチング特性に優れるとともにSiCよりも低コストという特徴があり、次世代パワー半導体といってもそれぞれ用途が分かれることになるだろう。2029年のGaN/SiCパワーデバイス世界市場規模5000億円のうち、EVやHEV(ハイブリッド車)向けが2500億円を占めると予測されるなど自動車向けの展開は重要だ。EVの走行システム向けのインバーターなどはSiCが用いられるが、その周辺の補機ではGaNモジュールの需要が期待できる。まずは産業機器向けなどで実績を積んでから、2023年ごろからEV/HEV向けの提案を本格化させたい」と説明する。
なお、富士通ゼネラルエレクトロニクスにGaN-FETチップを供給するトランスフォームは、産業機器大手の安川電機や大手ティア1サプライヤーのマレリ(Marelli)から出資を受けている。富士通ゼネラルエレクトロニクスとしては、トランスフォームとの関係性をてこに、これらの企業への提案も強化することになるとみられる。
また、親会社の富士通ゼネラルも、同社が推進する「サステナブル経営」の実現に向けて小型GaNモジュールを活用していく考えだ。同社のサステナブル経営では、温室効果ガスの排出量削減や社会課題解決への貢献が期待できる製品やサービスを社内認定する「サステナブル・プロダクト(サスプロ)認定制度」を導入しており、今回の小型GaNモジュールを最上級の「サスプロ・ゴールド」に認定したという。富士通ゼネラルの主力事業である空調機器への採用については「もちろん採用してほしいが、現在どのように有効活用できるかを検討してもらっている段階だ」(岡田氏)と述べるにとどめた。
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