手乗りサイズのGaNモジュールを富士通ゼネラル子会社が開発、EV補機向けにも展開:電動化(1/2 ページ)
富士通ゼネラル傘下の富士通ゼネラルエレクトロニクスが米国トランスフォーム製のGaN-FETチップを採用した最大定格650V/40A級の小型GaNモジュールを開発。200Vクラスを上回る高耐圧で、ゲートドライブ回路を内蔵するとともに、パワーデバイスを4素子以上搭載するフルブリッジ構成のGaNモジュールは「業界初」(同社)だという。
富士通ゼネラル傘下で同社の電子デバイス事業を担う富士通ゼネラルエレクトロニクスは2021年6月15日、オンラインで会見を開き、米国トランスフォーム(Transphorm)製のGaN(窒化ガリウム)-FETチップを採用した最大定格650V/40A級の小型GaNモジュールを開発したと発表した。「200Vクラスを上回る高耐圧で、ゲートドライブ回路を内蔵するとともに、パワーデバイスを4素子以上搭載するフルブリッジ構成のGaNモジュールは業界初」(同社)だという。DC-DCコンバーターなど電源回路向けの4素子構成とインバーター向けの6素子構成の2品種を用意しており、2021年秋からサンプル出荷を始める。サンプル価格(税別)は、4素子構成が3万5000円、6素子構成が4万4500円を予定。顧客からのフィードバックを反映するとともに、さらなるコスト削減を図った上で2022年秋ごろから量産を始める計画である。
開発した小型GaNモジュールは、次世代パワー半導体として期待を集めるGaNデバイスのトップベンダーとして知られるトランスフォームのGaN-FETチップを採用した。Vce(コレクタエミッタ間飽和電圧)が650Vで、Ic(コレクタ電流)は用途に合わせて45Aもしくは35Aを選択可能になっており、最大定格650V/40A級としている。モジュールの外形寸法は、4素子構成が34×63×12mm、6素子構成が35×46×12mmであり、両品種とも手のひらに乗るレベルだ。
小型GaNモジュールの内部は、上段側にあるゲートドライブ回路を実装したFR4(ガラスエポキシ)基板と、下段側にあるGaN-FETチップのフルブリッジ回路を実装する高放熱樹脂絶縁基板の2段構成になっている。今回のGaNモジュールの小型化で大きく貢献したのが、下段側にある高放熱樹脂絶縁基板の採用だ。一般的に、高耐圧のパワーデバイス回路を搭載するパワーモジュールは、金属製の放熱板を裏面にはんだ付けした熱伝導率の高いセラミック基板に実装することが多いが、この構造がモジュール設計の制約につながっていた。富士通ゼネラルエレクトロニクスは、産業機器向けインバーター用パワーモジュールの開発で培ったパワーデバイスの回路設計と実装技術を基に、エポキシ樹脂ベースの高放熱絶縁基板に金属製の放熱板を直接貼り付けることで、求められる冷却性能を実現したという。
また、GaNデバイスは、一般的なSi(シリコン)ベースのパワーデバイスよりも高周波での動作が可能だ。これによってゲートドライブ回路も小さくできるためモジュールの小型化につながっている。さらに、Siパワーデバイスと比べてスイッチング損失を低減できることも知られており、今回の小型GaNモジュールでも損失低減効果を確認している。あるロボットメーカーの400W級サーボモーターを用いて、競合他社のSi-IGBTモジュールと小型GaNモジュールで駆動した場合の効率と電力損失を比較したところ、Si-IGBTモジュールの効率96%/損失17Wに対して、小型GaNモジュールは効率98%/損失8Wとなり、電力損失を半減させられることが分かった。
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