素材を鉄からプラへ、UXにこだわった次世代スマートショッピングカート:スマートリテール
Retail AIは2021年6月10日、軽量化やタブレットの表示画面を改善して顧客のUX向上を図った、セルフレジ機能を搭載するスマートショッピングカートの次世代モデルを公開した。また、新たに月額制のサブスクリプション方式を導入して小売業界での普及を目指す。
Retail AIは2021年6月10日、タブレット端末の表示画面の改善や軽量化などによって顧客のUX(ユーザーエクスペリエンス)向上を図った、セルフレジ機能を搭載するスマートショッピングカートの次世代モデルを公開した。また、新たに月額制のサブスクリプション方式を導入して小売業界での普及を目指す。
使いやすさを重視したショッピングカート
トライアルホールディングス傘下のRetail AIが開発したスマートショッピングカートは、バーコードスキャナーを活用したセルフレジ機能を備えている他、搭載したタブレット端末の画面上でスキャン済み商品やクーポンなどを確認できる。商品のスキャン後は、店内の決済ゲートを通過すれば自動的に清算されるため、導入店舗側は自動化による業務効率化などの効果が期待できる。2021年6月時点で、トライアルカンパニーなど38店舗で3640台が稼働しているという。
今回の次世代モデルは、一般的なショッピングカートにタブレット端末やスキャナーを搭載していた既存モデルと異なり、ハードウェアとソフトウェアの両面でスマートショッピングカートとしての使い勝手を追求した設計となっている。
設計で重視したのが、高齢者や小柄な体格の顧客でも快適に利用できるようにするという点だ。例えば、ハードウェア面ではカートの軽量化や、(商品の)かごへの入れやすさを向上させる工夫を取り入れた。スマートショッピングカートはバッテリーやタブレット端末を搭載するため一般的なカートよりも重くなりやすいが、カートの素材を鉄などの金属からプラスチック素材に置き換えるなどで重量を約2〜3割程度軽くすることに成功した。
加えて、カートのハンドル部分下部にあるバーコードスキャナーで読み取った商品を、そのまま買い物かごに滑り込ませられる設計にしている。また、かご部分に重量センサーを設置することで、商品の重量を検知して、スキャン漏れの可能性がある場合にアラームを発する機能も搭載した。
ソフトウェア面ではネットリテラシーの高くない顧客でも安心して買い物ができるようサポートする工夫を取り入れた。例えば、タブレット画面に表示される画像やボタンを従来よりも見やすい形式に改めた他、チュートリアル機能やガイド機能を充実化させた。
顧客がスキャンした商品の情報からおすすめの商品を提案するAI(人工知能)レコメンドシステムも刷新した。これまではある商品カテゴリーについて特定の商品を薦めるというプリセット方式を採用していたが、より顧客に合った提案を行うために、トライアルグループが蓄積してきた約270億件のID-POSデータを基に学習したレコメンデーションアルゴリズムを新たに開発した。定期的に更新を行うことで、季節などを考慮したレコメンデーションを実現するという。
また、スマートショッピングカートの新たなビジネスモデルとして、月額制のサブスクリプション方式を導入する。初期費用を抑えることで導入障壁を下げ、小売業界での普及を目指す。2021年8月ごろにトライアルカンパニーの店舗で試験的に導入し、その後、国内外で展開していく計画だ。
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