複雑化する自律移動ロボットをモデルベース環境で効率よく開発する:ロボット開発ニュース(2/2 ページ)
自律移動ロボットへの期待感が、倉庫や工場、プラントの作業自動化ニーズとともに高まっている。だが、ロボットの高度な知能化はアルゴリズムの複雑化や、機械/油圧/電気などの分野のドメインナレッジを要求する。こうした開発を容易にするツールとしてMathWorksのMATLAB/Simulinkがある。
ROS/ROS2開発にも対応
MATLAB/SimulinkはROS/ROS2を用いたロボット開発にも対応している。オプション製品の「ROS Toolbox」をMATLAB/SimulinkとROS/ROS2をつなぐインタフェースとして使用することで、ROS/ROS2で設計したアルゴリズムをrosbag形式でMATLAB/Simulinkに読み込み評価することが可能となる。また、ROS/ROS2を介してロボットに接続することで、実機ロボットにコマンドを送信しながら動作を検証できる。
能戸氏はROS/ROS2について「ロボット開発に必要な幅広いライブラリをオープンソースで共有しており、最新のアルゴリズムも使用できるなど素晴らしい点が数多くある。一方で、自律移動ロボットでは多数のコンポーネントを統合するが、各コンポーネントを異なる人間が開発するケースも多く、この場合、各コンポーネントの中身を理解するのが難しくなりやすいという問題もある。この他、開発者によってはドキュメンテーションの不足感を覚えるとも聞く。MATLAB/Simulinkで開発したアルゴリズムは安全性やロバスト性が保証されており、各アルゴリズムをMATLAB内で組み合わせて使える」と指摘する。
また能戸氏は、現時点ではROSとROS2を併用している開発者が一定程度いるとした上で「将来的にROSのサポートが切れるというアナウンスがすでに出ており、いずれはROS2に移行せざるを得ない状況になる。MATLAB/Simulinkであればコードを書き直す手間なく、ROSのコードからROS2対応のコードを自動生成できる」とも説明した。
ハードウェアに合わせたコードを自動生成
シミュレーションとアルゴリズムの動作検証後、Rasberry PiやPX4、NVIDIA Jetsonなどのハードウェアにアルゴリズムを実装するプロセスまで対応する。ハードウェアに合わせてCやC++や、VHDL、Verilogといった言語でコードを自動生成する他、NVIDIAのGPUに実装できるよう「CUDA」にも対応している。
能戸氏は自律移動ロボットの可能性について「ロボットは先端技術との組み合わせ次第で、より現場での効果的な運用が可能になる。ローカル5Gネットワークと組み合わせればデータ集約や制御が容易になり、収集したデータを基にクラウド上でAIによるデータ解析を行えば運用最適化や予知保全に役立つ。MathWorksではこうした関連技術に対するソリューションも提供している」と語った。
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