MATLAB/Simulinkがシステムズエンジニアリングに対応、「R2019a」をリリース:組み込み開発ニュース
MathWorks Japanはモデルベース開発環境「MATLAB/Simulink」の最新バージョン「R2019a」を発表。強化学習への対応や、アナログICやSoCの設計を容易にする新製品、車載ソフトウェア標準のAUTOSARやより複雑なシステムの開発に求められるシステムズエンジニアリングに対応する機能追加などが特徴となっている。
MathWorks Japanは2019年3月27日、モデルベース開発環境「MATLAB/Simulink」の最新バージョン「R2019a」を発表した。AI(人工知能)関連では、制御システム向けに強化学習を行える新製品の追加や、深層学習(ディープラーニング)の機能強化を図った。この他、アナログICやSoC(System on Chip)の設計が容易になる新製品や、車載ソフトウェア標準のAUTOSARや、より複雑なシステムの開発に求められるシステムズエンジニアリングに対応する機能を追加。静的解析ツールとして知られる「Polyspace」については、サーバ上での解析や解析作業の運用管理を別ライセンス化するなど使い勝手を向上した。
AI関連の新製品になるのが、強化学習を行うための「Reinforcement Learning Toolbox」だ。On-Policyでは「Policy Gradient」「SARSA」、Off-Policyでは「Deep Q-Network」「DDPG」「A2C」「Q-Learning」に対応している。「R2019a」のリリース時点では、制御システム向けの応用に特化した機能構成になっているという。
深層学習を行うための「Deep Learning Toolbox」では、Voxel形式などの3Dイメージデータが扱えるようになり、ビデオのパターン分類やジェスチャー認識向けにLSTM(Long Short-Term Memory)とCNN(畳み込みニューラルネットワーク)の組み合わせが可能になった。YOLO(You Only Look Once)v2による物体検出の深層学習に対応し、その学習結果について「GPU Coder」を用いたNVIDIAのCUDA環境向けのコード生成も行える。
アナログICの設計に用いる「Mixed-Signal Blockset」や、SoCとFPGAの設計に用いる「SoC Blockset」も追加された。Mixed-Signal Blocksetはこれまでライブラリとして提供していたものをツール化し、より広いユーザー層に抽象度の高い段階でのシミュレーションを利用できるようにすることを目的としている。SoC Blocksetでは、SoCやFPGAの回路構成と、その回路上で動作させるソフトウェアを組み合わせた、よりトータルなシミュレーションが可能になる。
システムズエンジニアリング向けの「System Composer」
現在、航空機や宇宙機器、自動運転車など、システムとシステムが組み合わさったより複雑なシステムを効率よく設計する手法としてシステムズエンジニアリングの採用が広がりつつある。このシステムズエンジニアリングをモデルを使って行うのがMBSE(Model Based Systems Engineering)だ。MATLAB/Simulinkは、単独のシステムである制御システム向けのモデルベース開発環境として自動車業界などで広く利用されているものの、システムズエンジニアリングやMBSEに対応するツールは投入していなかった。
R2019aでは、システムズエンジニアリングとMBSEに対応する新たな機能として「System Composer」を追加した。System Composerを使うことにより、上流における大規模システムの設計と、それらの大規模システムを構成する制御システムの詳細設計の間で自由に行き来できるようになる。「ユーザーから強く要望されていた機能だ」(MathWorks Japan インダストリーマーケティング部 部長の阿部悟氏)。
AUTOSAR向けの新機能である「AUTOSAR Blockset」が、これまで「Embedded Coder」で利用可能だったAUTOSAR向けサポートパッケージの機能を拡充し製品化したものだ。Classic Platform(CP)とAdaptive Platform(AP)の両方に対応し、アプリケーション層の設計とシミュレーション、コード生成などを行える。
静的解析ツールのPolyspaceは、バグ検出やコードメトリックスを行う「Polyspace Bug Finder」と、最終的なコードに問題が無いことを証明する「Polyspace Code Prover」から構成されている。従来は、MATLABのライセンスが必須だったが、R2019aでは、MATLABライセンスが不要になった上で、従来のデスクトップPC向けのライセンスの他に、「Polyspace Bug Finder Server」と「Polyspace Code Prover Server」という新製品が加わった。この新製品は、サーバ上におけるPolyspaceの静的解析エンジンの実行や、CI(継続的インテグレーション)環境との連携、解析結果共有の自動化といった機能を強化するためのものだ。
開発チーム内での解析結果のレビューや共有といったコラボレーションをWebブラウザを介して行える「Polyspace Bug Finder Access」と「Polyspace Code Prover Access」も新たに追加された。Access系製品のライセンス料金をかなり安価に抑えたことにより、数百人が関わるソフトウェア開発プロジェクトでもPolyspaceを活用しやすくなった。
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