教師なし学習でも「世界最高クラス」の精度で不良品を見分ける画像分類AI:人工知能ニュース
東芝は2021年4月28日、教師なし学習でも高精度でグループ化できる画像分類AI(人工知能)を開発したと発表。ラベル付け作業を行っていない画像データから、高精度に不良品や製品欠陥を検出することが可能になる。
東芝は2021年4月28日、教師なし学習でも高精度でグループ化できる画像分類AI(人工知能)を開発したと発表した。ラベル付け作業を行っていない画像データから、高精度に不良品や製品欠陥を検出することが可能になる。
教師なし学習の分類精度向上に貢献
今回東芝が発表した画像分類AIは、分類基準を指定するラベル付けを行っていない画像から有効な特徴を抽出、学習して、それに基づいた画像分類を高精度で実行するものである。
この画像分類AIは、1枚の画像を1つの分類基準とする「疑似的な教師あり学習」を行う。これによって背景のように多くの画像に表れるものを除き、一部の画像にだけ存在する特徴を抽出できる。加えて学習時には、抽出する特徴が重複しないようにする独自の学習基準を設定しており、これによって画像内の特徴からグループ化に有効な特徴量が作成できるという。
現在、製造業ではAIによる画像分類を活用した外観検査や不良品検知プロセスの自動化、効率化が注目されている。特に期待されているのが教師なし学習を用いたAIだ。AIの学習方法には「教師あり学習」と「教師なし学習」の2種類があるが、教師なし学習は事前に分類基準を設定する手間が掛からないため、運用、導入コストの抑制が見込めると期待されている。
ただし、従来の教師なし学習はAIの分類精度に課題があった。例えば外観検査の場合、本来検出するべき傷やほこりなどの異物ではなく、それ以外の背景領域が画像の大半を占めている。このため、分類基準を設定しない場合、背景に含まれる特徴も一緒に学習してしまうため分類精度が低下しかねない。
こうした課題を解決し得るのが、今回発表された画像分類AIである。実際に、この画像分類AIを活用して公開画像データセット「ImageNet-10」を用いたグループ化実験を行ったところ、オートエンコーダーを用いる従来技術を使用した場合は71.0%だった分類精度が95.4%に向上し、「世界トップレベル」(東芝)の性能を達成したという。
今後は製造現場での検査工程や製品に適用しながら、性能実証を進める予定だ。また、東芝デジタルソリューションズが展開する製造業向けソリューション「Meisterシリーズ」にも取り入れる方針だという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 東芝が注力するインフラサービス事業、その「5W1H」とは
東芝が技術戦略を発表。中期経営計画「東芝Nextプラン」では、2018〜2020年度で成果が得られたフェーズ1を継続しつつ、フェーズ2を推進していくための2021〜2025年度の事業計画を発表しているが、今回発表した技術戦略では、この新たな事業計画の中核に据えたインフラサービス事業をどのように進めていくかについての説明があった。 - 鍵を握るのはインフラ事業分野、東芝が持つAI技術ポートフォリオの“強み”とは
認識精度などの点で「世界トップレベル」のAI技術を多数保有する東芝。これらのAI技術ポートフォリオを、具体的にどのように事業に生かすのか。東芝執行役員の堀修氏と、東芝 研究開発センター 知能化システム研究所 所長の西浦正英氏に話を聞いた。 - アップルカーではなくVPPで生きる、東芝の「インダストリアルAI」
東芝は同社が注力するインフラサービスなどで力を発揮するAI技術「インダストリアルAI」の取り組みについて説明。「50年以上の歴史を持ち、世界3位、国内1位のAI特許出願数を誇る東芝のAI技術をインフラサービス向けに積極的に展開していく」(同社 執行役員 首席技監の堀修氏)という。 - 写真1枚で撮影場所や被写体の大きさを自動認識するAI、東芝がプラント業務で活用
東芝は2021年2月1日、1枚の写真から撮影場所や被写体の大きさを自動認識し、そのデータを管理できるAI(人工知能)を開発したと発表した。発電プラント施設などの巡視や保守点検作業の自動化などに貢献する。 - 技術者知見を学習する不良原因解析AIを東芝が開発、自社半導体工場へ導入
東芝は2020年12月10日、現場技術者の知見を加えることで半導体工場や化学プラントなど変数が多項目に及ぶ工場において、不良原因解析を容易化するAIを開発したと発表した。同技術は、機械学習分野における最大級の国際会議の1つである「NeurIPS 2020」に採択されている。 - 顔と氏名を瞬時にひも付け特定/追跡、TDSLの顔認識AI搭載ソリューション
東芝デジタルソリューションズは2020年11月24日、同社が独自開発した顔認識AIエンジンを搭載して、映像内の人物特定を行うソリューション「カオメタ」の説明会を開催した。独自の顔認識AIエンジンと氏名と顔をひも付けたデータベースを連携させることで、映像内の人物を特定し、追跡し続けることが可能だ。