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早くから盛り上がっていたはずの「軽商用車のEV化」はなぜ失速?自動車業界の1週間を振り返る(1/2 ページ)

今週は佐川急便が集配用の軽自動車をEV(電気自動車)に切り替えるというニュースが話題になりました。

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 1週間、おつかれさまでした。個人的な話題で恐縮ですが、今週は歯痛に悩まされる1週間でした。親知らずを抜いたときにその隣の虫歯を治療したのですが、神経ギリギリまで削って穴をセメントで埋めたため、何かの拍子に神経とセメントが触れてしまうのだそうです。その歯痛が今週は何度か起きています。治療した歯が痛いというよりも顎の片側が骨ごと痛むので、寝ていても目が覚めるほどです。

 痛いので神経を取ってしまいたいと思いますが、神経を取り除くとその歯に血液が循環せず歯がもろくなり、虫歯にも気付きにくくなるなど大きなデメリットがあるようです。痛手でも生かし続けるか、取り除いて束の間の平穏を手に入れるか、難しい判断です。歯は大事にしましょうね。

佐川急便が集配用軽自動車をEVに

 さて、今週は佐川急便が集配用の軽自動車をEV(電気自動車)に切り替えるというニュースが話題になりました。佐川急便は2020年6月に日本のEVベンチャーASFと小型EVの共同開発と実証実験に合意。今週4月13日に試作車を披露しました。車両を中国の広西汽車集団が生産することも発表されています。2022年9月ごろに納車となるそうなので、街で見かけるのは少し先ですね。

 この件はさまざまな反応を呼びましたね。中国自動車メーカーの躍進に対する危機感を示す人、どのように低コスト化を実現したのか考察する人、なぜ日系自動車メーカーがニーズに答えられないのかと憤る人など、いろいろ見かけました。詳しい方なら、何年も前から軽商用車が何度もEV化にチャレンジしてきたことをご記憶でしょう。日系自動車メーカーが何もしていなかったかのように言われているのはいただけませんね。

 まずは三菱自動車の「MINICAB-MiEV(ミニキャブミーブ)」(2011年12月発売)ですね。日産自動車やスズキにOEM供給されました。トラックタイプの「ミニキャブミーブトラック」もありました。商用車とは少し違うかもしれませんが、トヨタ車体の「コムス」はセブンイレブンで見かけたことがある方という方も多いのでは? EVベンチャーのゼロスポーツが日本郵政グループから大型受注した、というニュースも2010年にありましたね(さまざまな事情から納入に至らず、ゼロスポーツは破産しました)。

 古い記事を調べていると、導入先としてさまざまな企業の名前が出てきます。例えば、ミニキャブミーブの量産第1号車はヤマト運輸に納入されました。実証実験も含めると、さらに多くの企業が軽商用EVに触れたのではないかと思われます。

 それが2021年の今日「商用車のEVのラインアップは、ここ数年ほとんど増えておらず、結果として中国やドイツの事業者に頼ることが多い。自動車メーカーが商用車のニーズに応えられていないのは、乗用車が優先されているのではないか」と物流事業者の団体である日本物流団体連合会に指摘されています。


「MINICAB-MiEV」の第1号車を引き渡す2011年当時の写真。三菱自動車 社長の益子修氏(右)からキーを受け取るヤマト運輸社長の山内雅喜氏(クリックして拡大) 出典:ヤマト運輸

 早くから取り組みが盛んだったはずの軽商用EVが実を結ばなかったのは、単に価格競争力だけの問題ではなかったように思います。今から10年前の技術ですので、物流事業者が満足できる性能ではなかったのかもしれません。軽商用EVを作り込んで改良させよう、というモチベーションが自動車メーカーでも物流事業者でも続かなかったのかもしれません。どうしてもEVが必要だという強い動機にも欠けていたのかもしれません。

 そう思うのは、森林ジャーナリストの田中淳夫氏による「ネットの声が悪路走行用の新型トラックを生み出した!」という最近の記事を読んだからです。林業で必要とされる、高床で悪路走行に強い低速ギアタイプのトラックの新型車について詳しくまとめられた記事です。

 林業向けのトラックは生産終了で2016年ごろから手に入りにくくなり、中古車も取り合いになっていたのだそうです。林業の現場から悲鳴が上がり、関心が高まった結果、日野自動車が開発に乗り出しました。かつての走行性能を上回る悪路走破性を確保しただけでなく、環境規制をクリアしながら、価格も抑えたとのこと。林業向けのトラックはEVでも軽商用車でもありませんが、必要としている人のためにつくられるのが商用車なのだな、としみじみしました。

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