「TOPS競争」は次の段階へ、アップデートし続ける自動運転車向けにNVIDIAが1000TOPS:車載半導体
NVIDIAは2021年4月12日(現地時間)、オンラインで開催中のユーザーイベント「GTC(GPU Technology Conference) 2021」(開催期間:同年4月12〜16日)において、自動運転車に関する最新の取り組みを明らかにした。
NVIDIAは2021年4月12日(現地時間)、オンラインで開催中のユーザーイベント「GTC(GPU Technology Conference) 2021」(開催期間:同年4月12〜16日)において、自動運転車に関する最新の取り組みを明らかにした。
最新のSoC(System on Chip)「Orin」を導入すると2020年5月に発表した自動運転車向けのプラットフォーム「NVIDIA DRIVE」は、Volvo Cars(ボルボ)が2022年に「XC90」の次期モデルで採用されることが決まった。OrinのSoCは最大254TOPS (1秒当たり254兆回の演算が可能)の処理性能を持ち、車両の耐用年数の期間にわたって継続的なソフトウェア更新に対応できるよう設計されているという。ボルボも、NVIDIA DRIVE Orinを搭載した自動運転コンピュータによって、継続的な自動運転システムの更新を可能にするとしている。この他、中国系のEV(電気自動車)ベンチャーでも、NVIDIA DRIVEの採用実績が増えているという。
“TOPS競争”に疑問を投げかける車載半導体メーカーもいるが、NVIDIA DRIVE Orinの先のロードマップとして1000TOPSを超える処理性能を持つ「Atlan」の概要も発表。NVIDIAの最新のGPUアーキテクチャ、新しいArm CPUコア、ディープラーニングおよびコンピュータービジョンアクセラレータを活用してOrinの約4倍の処理性能を実現する。
Atlanは、自動運転システムだけでなく、高度な音声認識に対応したインテリジェントコックピットや、従来のインフォテインメントシステムの機能も同時に実行することができるという。また、NVIDIAのDPU(Data Processing Unit)「BlueField」を採用することにより、セキュリティも向上させる。AtlanのソフトウェアはNVIDIAの全ての自動運転プラットフォームと互換性を持ち、既存のソフトウェア資産を活用することができる。2023年からサンプル出荷を開始し、2025年に量産車での採用を見込んでいる。
開発環境も充実させる。データの収集から開発までパイプライン全体に関わるという基本方針は変えていない。検証、開発用のオープンな自動運転プラットフォーム「NVIDIA DRIVE Hyperion」は第8世代を発表。2021年後半から、NVIDIA DRIVEのエコシステムを通じて利用でき、自動運転車のハードウェアとソフトウェアの包括的な検証に必要な全てを提供するとしている。
NVIDIA DRIVE Hyperionには、2つのOrinからなるレベル4の自動運転に対応した処理性能に加えて、12台のカメラ、3台の車内カメラ、9台のレーダー、2台のLiDARも含まれている。NVIDIA DRIVE Hyperionを自動運転車として走らせるためのソフトウェアや、走行データのリアルタイムな記録などに対応したツールセットも併せて提供する。走行中に周辺環境の3Dデータも収集できる。開発したソフトウェアは、量産車に搭載可能なものとして使うことができるという。
自動運転車の開発に不可欠なシミュレーションに関しては、走行シーンを3D CGで描画する機能をゲームエンジンからシミュレーション専用のエンジン「Omniverse」に移行させる。
NVIDIAが得意とするレイトレーシング技術も組み込んで物理的な再現性を向上。カメラやミリ波レーダー、LiDARなどセンサーのシミュレーションや、ディープニューラルネットワークのトレーニングを強化する。タンクローリーなどの車体から反射した光や、薄暗いトンネル内での影などもシミュレーションで再現可能だとしている。Omniverseを採用したシミュレーション「DRIVE Sim」は2021年夏から早期アクセスプログラムを提供する。DRIVE Simには、地図データや環境モデル、センサーモデル、車両モデルなどをさまざまな企業が提供するエコシステムもある。
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