10nm採用の第3世代「Xeon SP」はエッジでも展開、AI性能はNVIDIA「A100」の1.3倍:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
インテル日本法人がデータセンター向けの「Xeonスケーラブル・プロセッサー(以下、Xeon SP)」の第3世代品を発表。10nmプロセスを採用することで、14nmプロセスの第2世代Xeon SPと比べて平均46%の性能向上を果たした。主な用途は、クラウド、エンタープライズ、HPC、5Gの他、IoTなどエッジでの利用も可能としている。
セキュリティ機能と暗号化アクセラレーション機能を搭載
第3世代Xeon SPは、新たな機能追加によるさまざまな用途での性能向上も大きな特徴になっている。
まず、さらに高度化を続けるサイバー攻撃に対抗するためのセキュリティ機能として追加されたのが「SGX(ソフトウェア・ガード・エクステンションズ)」である。SGXは、ソフトウェア階層においてより物理層に近いOSやハイパーバイザーなどを利用したサイバー攻撃に対抗するもので、指定したアプリケーション以外からのアクセスをできなくする「エンクレーブ」と呼ぶメモリ領域を確保する。これまで「Xeon-Eシリーズ」で採用されていたSGXだが、第3世代Xeon SPではあらためてエンクレーブで確保できるメモリ容量を従来比4000倍の最大1TBに拡張して実装された。
この他にもセキュリティ機能では、メモリ領域全体を一括して暗号化して物理的な攻撃から保護する「トータル・メモリ・エンクリプション」や、ファームウェアの防御/復元を行う「プラットフォーム・ファームウェア・レジリエンス(PFR)」も採用している。
また、セキュリティの確保に向けてさまざまなシステム上での利用が拡大する暗号化処理に対応するため、暗号化アクセラレーション機能を内蔵している。512ビットの超広域ベクトル演算機能を備えるAVX-512を用いて、CPU上での処理に負荷を与えることなく、暗号化処理を並行して行えるという。暗号化アクセラレーション機能の効果としては、例えば、NGINXのTLSの暗号化Webサーバが1秒当たりの接続数を4.2倍に拡大した事例などがある。
なお、第3世代Xeon SPのベースとなるマイクロアーキテクチャ「Sunny Coveコア」は、アウトオブオーダー実行命令範囲の拡大や、スケジューラーのエントリー数、割り当てキューなどを拡大するとともに、データセンターに最適化した機能として中間レベルキャッシュを大容量化している。
第3世代「Xeon SP」は10nm SuperFinは採用せず
第3世代Xeon SPで採用した10nmプロセスは、2020年9月発表の「第11世代インテル Core プロセッサ ファミリー」(開発コード名:Tiger Lake)が採用した「SuperFinプロセステクノロジー」ではないという。「SuperFinではない10nmプロセスも改善を積み重ねており、今回の第3世代Xeon SPに適用されている」(土岐氏)。また、FPGAのAgilexも10nmプロセスを採用しているが、こちらはプロダクトシートに「10nm SuperFin」と明記されている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 新CEOの「IDM 2.0」がインテルを戒めから解き放つ、ファウンドリー事業にも本腰
インテルが、7nmプロセスの進捗状況や、ファウンドリー事業の立ち上げ、工場の建設計画などについて発表。2021年2月に新CEOに就任したパット・ゲルシンガー氏がグローバルWebキャストに登壇し、同社がこれまで堅持してきたIDM(垂直統合型デバイス製造)を大きく進化させる「IDM 2.0」のビジョンについて説明した。 - インテルがIoTエッジ向けプロセッサに10nmプロセスを採用、TSNや機能安全対応も
インテル(Intel)が産業機器などのIoTエッジ向けに10nmプロセスを採用したプロセッサ製品群を発表。低消費電力を特徴とする「Atom」の新たな製品ライアップとして「Intel Atom x6000Eシリーズ」を投入し、より性能を重視した用途向けには「第11世代 Core プロセッサ ファミリー」をIoTエッジ向けに最適化した製品を展開する。 - インテルの新プロセッサ「Tiger Lake」、トランジスタやメタル改良で高性能化
インテルは2020年9月3日、報道関係者向けのプレスセミナーをオンライン開催し、動作周波数の向上と消費電力の削減を同時に達成する「SuperFinプロセステクノロジー」や、新グラフィック機能などを実装した第11世代インテル Core プロセッサ ファミリーを発表した。同プロセッサの開発コード名は「Tiger Lake」である。 - インテルが5G基地局向けにAtomプロセッサを開発、ストラクチャードASICも投入
インテルは5Gインフラ向けの新製品ポートフォリオを発表した。5G無線基地局向けのSoC「Intel Atom P5900 プロセッサ」など全4種類を発売する。 - ディスクリートGPUまで手に入れたインテル、AI全方位戦略を強化
インテルは2019年11月27日、記者向けにAIに対する最新の取り組みについて説明会を開き、グローバルで先日発表されたGPUアーキテクチャ「Xe(エックスイー)」を含め、同社のAI向けプロセッサポートフォリオを紹介した。 - AIに“全方位”で挑むインテル、GPUや専用プロセッサとどう戦うか
インテルは2018年12月17日、東京都内で記者説明会を開催し、2018年における同社の活動の振り返りと2019年以降の展望について説明した。本稿では、説明会で示された内容の中でAI(人工知能)やB2Bコンピューティングに関するトピックを中心に紹介する。