【トラブル5】成形品に予期せぬ線が!? ウェルドラインの仕組みとその対策:2代目設計屋の事件簿〜量産設計の現場から〜(5)(3/3 ページ)
量産樹脂製品設計の現場でよくあるトラブルを基に、その原因と解決アプローチについて解説する連載。第5回は、成形品に発生した予期せぬ線「ウェルドライン」について取り上げ、その仕組みと対策について解説する。
極端に肉厚が異なる成形品の場合
続いて、部位によって極端に肉厚が異なる成形品の例を見てみましょう(図6)。
このような肉厚が極端に異なる場合の樹脂の流れですが、基本的に厚肉部分は樹脂が流れやすく、薄肉部分は流れにくくなります。つまり、先に厚肉部分に樹脂が流れていき、その後、薄肉部分に樹脂が流れる傾向にあるため、薄肉部分でウェルドラインが生じます(図7)。
当然ですが、成形品の肉厚を均一にすれば樹脂の流れやすさも均一化されますので、ウェルドラインの発生を防ぐことができます。こちらは金型設計というよりも“製品設計の領分”といえるでしょう。
今回のまとめ
ウェルドラインは射出成形で製品を成形する上で、完全に防ぐことが難しく、ウェルドラインが発生した位置は外観不良や強度低下といった事態を招きます。その対策としては、金型設計においてゲート位置を調整することや、製品設計において肉厚を可能な限り均一にすることが挙げられます。
ゲート位置の調整については金型設計の領分であるため、製品設計とは無関係のように思われるかもしれませんが、樹脂製品の設計をするのであれば、ウェルドラインの発生メカニズムとその対策について理解を深めておいて損はありません。
強度が必要な部分やユーザーの目に見える部分(製品の外観)にウェルドラインを出さないよう、金型を意識したより良い設計、より良い製品づくりにぜひ生かしてください。 (次回へ続く)
Profile
落合 孝明(おちあい たかあき)
1973年生まれ。2010年に株式会社モールドテック代表取締役に就任(2代目)。現在、本業の樹脂およびダイカスト金型設計を軸に、中小企業の連携による業務の拡大を模索中。「全日本製造業コマ大戦」の行司も務める。また、東日本大震災をうけ、製造業的復興支援プロジェクトを発足。「製造業だからできる支援」を微力ながら行っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 【トラブル4】射出成形した製品が反ってしまった!! その原因と対策アプローチ
量産樹脂製品設計の現場でよくあるトラブルを基に、その原因と解決アプローチについて解説する連載。第4回は、箱状の製品を射出成形した際に生じてしまった「反り」の問題について、そのメカニズムと対策について考える。 - 【トラブル3】成形品に擦り傷が発生!! 抜き勾配の設定に欠かせない3つのルール
量産樹脂製品設計の現場でよくあるトラブルを基に、その原因と解決アプローチについて解説する連載。第3回は、「抜き勾配」に関する理解を深め、成形品の表面に擦り傷が生じてしまう問題の解決に取り組む。 - 【トラブル2】製品表面にエクボのようなへこみが! 射出成形の外観不良ヒケ対策
量産樹脂製品設計の現場でよくあるトラブルを基に、その原因と解決アプローチについて解説する連載。第2回は、成形品の表面にエクボのようなへこみが生じる「ヒケ」に関するトラブルとその対策アプローチについて解説する。ヒケ発生の影響を最小限に抑えるには!? まずは発生の仕組みから理解していこう。 - 【トラブル1】試作がそのまま使えない!? 3Dプリンタと量産金型の違い
量産樹脂製品設計の現場でよくあるトラブルを基に、その原因と解決アプローチについて解説する連載。第1回は、3Dプリンタで試作した製品を量産しようとした際、そのままでは金型に展開できず設計の見直しを余儀なくされた……というトラブルだ。問題の原因はどこか? その解決アプローチとは? - 金型を作りやすくする入れ子と冷却機構
今回は、入れ子を入れる理由に加えて、入れ子の設定と関連が深い金型冷却の機構について解説する。 - 良品を取り出すエジェクタ機構のテクニック
今回は製品を金型から取り外す「突き出し(エジェクタ)機構」について解説する。金型から良品を取り出すためには、製品仕様に合わせて最適な突き出し方法を選択することが必須だ。