小松・九谷のモノづくりの魅力を発信する展示会、3Dプリンタを活用した作品も:デザインの力
こまつKUTANI未来のカタチ実行委員会は2021年3月12日、同年3月14〜21日までの期間、21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3(東京ミッドタウン)で開催中の展示会「小松・九谷のものづくり『素材のカタチ』」に関するオンライン記者説明会を行った。
こまつKUTANI未来のカタチ実行委員会(石川県小松市)は2021年3月12日、同年3月14〜21日までの期間、21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3(東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン)で開催中の展示会「小松・九谷のものづくり『素材のカタチ』」に関するオンライン記者説明会を行った。
誕生から約360年の歴史を誇る伝統工芸品「九谷焼」の生産地として知られる石川県小松市は、弥生時代からの石文化をルーツに、九谷焼の他にも、繊維、建設機械、産業機械といったさまざまな産業を擁するモノづくりが盛んな地域でもある。
こまつKUTANI未来のカタチ実行委員会は、石川県九谷窯元工業協同組合、小松九谷工業協同組合、小松市商工会議所、小松市などで構成され、“100年後にも愛される九谷焼”を目指し、「1.持続可能な製造体制を造る」「2.『九谷焼のまち小松』として、市内外に認知を拡大させる」「3.製品価値向上のために研究ならびに実践をする」という3つの活動方針を掲げ、さまざまな企画や取り組みなどを通じて、小松・九谷のモノづくりの魅力を発信する役目を担う。
「新しい生活様式においても愛される小松のモノづくりとは?」を探求
今回開催する「小松・九谷のものづくり『素材のカタチ』」は、アフターコロナの新しい生活様式において「変わりゆくもの、変わらないものを熟思し、それでも愛される小松のものづくりの豊かさ・強さとは何か」をメインテーマに企画された展示会である。同展示会では「作家自身による制作」「美大生との共創」「料理人との共創」の3方向による作品群で展示会場を構成し、九谷焼や繊維をはじめとする小松のモノづくりの多様性や魅力、可能性を発信するとしている。
多摩美術大学 特任准教授で、同展示会のスーパーバイザーを務める丸橋裕史氏は「われわれは今回の展示会を考えるに当たり、まず“新しい生活様式においても愛される小松のモノづくりとは何か?”という問い掛けを軸に、関係者と対話や議論を重ねてきた。不確実性が高まる昨今、そして、生活環境が大きく変わろうとする今、社会への観察や見立て、正解のないものへの挑戦、審美性と思想・表現、経済合理性などの両立、未来への問いの投げ掛け、こうしたものをデザインやアートを通じて垣間見ることができるのではないかと考えた」と同展示会の開催背景について語る。
「作家自身による制作」では、伝統的な表現、新たな作風で九谷の文化を切り開く九谷焼作家らが“これからの生活の形”を思案し、創作した作品群を展示する。「美大生との共創」では、“これからの新しい生活の形”をキーワードに作家と美大生とがコラボレーションして創作した作品群が並ぶ。そして、「料理人との共創」では、“これからの食の形”“どのような器を求めるか”について、小松市の人気レストラン「SHOKUDO YArn(ショクドウ ヤーン)」のオーナーシェフである米田裕二氏と作家が対話し、議論を深めて生み出された作品群の展示を行う。
同展示会に並ぶ作品群の中には、3Dプリンタをはじめとするデジタルファブリケーション技術などを活用して、制作されたものもあるという。「例えば、“消毒の新しい形”をテーマにした『消毒液自動ディスペンサー』は3Dプリンタで造形したモックアップで形状などを確認しながら制作された作品の1つだ。3Dプリンタで作ったモックアップを基に、作家が作品として仕上げるというステップで創作活動に取り組んだ作品を数多く見ることができる。展示作品の中には、実際に3Dプリンタで造形したモックアップも一緒に展示しているものもある」(丸橋氏)。
こまつKUTANI未来のカタチ実行委員会では、今後も継続して各地での展覧会などのイベントを計画している。併せて、小松市民にも九谷焼の魅力を伝え、同実行委員会の活動を知ってもらうために、同年4月上旬から5月下旬にかけて小松市にある「九谷セラミック・ラボラトリー(通称:セラボ九谷)」での巡回展示を実施する。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大が沈静化した後は、海外展開も視野に入れて活動を進めるとしている。
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