デジタル出力非対応の旧型半導体製造装置、京セミが取り組んだIoT化の道のり:FAインタビュー(2/2 ページ)
京都セミコンダクターはIoT化プロジェクト「スマートFAB」を推進中だ。同社はRaspberry Piなどの各種センサーを用いて、25年以上前から使用を続けるプラズマCVD装置などをIoT化した。これにより各種装置の稼働状況やクリーンルームの環境情報に基づいた早期の異常検知を実現している。
コーディング人材がタスクフォース内にいたことが大きい
MONOist タスクフォースとは具体的にどのようなものですか。
西村氏 タスクフォースは全体で約10人、3チームから構成されている。
1つ目のチームはIoT化の対象となる機器の選定や設備の仕様確認、運用方法を決める「仕様策定チーム」、2つ目はネットワーク接続のために機器やセンサーの基本仕様を確認し、実際の接続も担当する「ネットワーク接続チーム」、3つ目はIoT化のための社内LANの構築、ネットワーク工事を行う「独立LAN構築チーム」だ。これらのチームを統括するリーダーを私が務めている。
なお、タスクフォースはスマートFABだけでなく、QCD(品質、コスト、納期)の改善を進める社内プロジェクトを遂行するものなど複数のものが立ち上がっている。
MONOist メンバーはどのように集めたのですか。
西村氏 タスクフォースのメンバーは全員、通常業務と兼務している。業務時間全体の20%を上限にタスクフォースの時間を確保するようにした。週5日勤務のメンバーであれば、内2日はタスクフォースの仕事に専念できる。
これによって、通常業務になるべく支障を出さずに、コーディング担当者などIoT化に不可欠となるIT領域の専門人材を確保できた。チーム内での役割分担が明確になっており、かつ、メンバー間でのコミュニケーションを適切にとり、うまく連携できるようにしたので、プロジェクトをその分効率的に進められた。
MONOist ITベンダーへの外注は検討しなかったのでしょうか。
西村氏 正直なところ、タスクフォース内にコーディングできるIT人材がいたのが大きかった。それがなければ外注に頼らざるを得ず、コストは大きく膨らんでいただろう。
旧型設備に合うコネクターが見つからず…
MONOist プラズマCVD装置にはデジタル信号を出力する仕組みが無かったとのことですが、どのようにしてデータ取得を実現したのでしょうか?
西村氏 ラズパイや他設備との連携を鑑みた上で、最適なADコンバーターを選定して接続した。アナログ出力の信号をデジタル化して、ラズパイを通じてゲートウェイ、クラウドへと送信する。だが、ただ性能の良いコンバーターを選んでも意味はない。コンバーターの性能にかかわらず、ラズパイの読み込み速度は一定で変わらないからだ。コストを抑えるためにも、タスクフォースの専門メンバーに適切なADコンバーターを選んでもらった。
ただ、課題もあった。何しろ古い機器を相手にしているので、機器の規格に合うコンバーター用のコネクターを探し出すのに手間取った。最近のコネクターは小型化が進んでいためサイズが合わない。Bluetoothなど無線接続に対応したものなど現時点では求めていない機能を備えたものも珍しくなかった。
最初はすぐに手に入るだろうと軽く考えていたが、想定以上に難航し、最終的には東京の秋葉原を訪ね歩き、ようやく適したコネクターを見つけることができた。コネクターを探した後は、比較的スムーズにデータの可視化まで進められた。
MONOist 今後、スマートFABをどのように進めるつもりですか。
西村氏 老朽化した他設備への横展開を進めるつもりだ。また取得したデータを基にSPC(統計的工程管理)を進める計画もある。また、作業場にカメラを設置して、作業員の動線を把握するミッションにも取り組んでいる。
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