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生産性を2.2倍に高め、残業時間を3343時間削減したIoTによる生産革新の成果MONOist IoT Forum 2020 Digtal Live(後編)(1/2 ページ)

MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパンの、アイティメディアにおける産業向けメディアは2020年12月14〜15日、オンラインでセミナー「MONOist IoT Forum 2020 Digtal Live」を開催した。同セミナーは通算で14回目となるが、オンラインでの開催は初となる。後編では久野金属工業(愛知県常滑市)取締役副社長の久野功雄氏による特別講演「機械・人・仕事のDXによる生産性革命」の内容を含むDay2の内容を紹介する。

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 MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパンの、アイティメディアにおける産業向けメディアは2020年12月14〜15日、オンラインでセミナー「MONOist IoT Forum 2020 Digtal Live」を開催した。同セミナーは通算で14回目となるが、オンラインでの開催は初となる。

 前編では、日立製作所 制御プラットフォーム統括本部 大みか事業所 統括本部長の花見英樹氏による「世界の先進工場『Lighthouse』に選出された日立製作所 大みか事業所の取り組み」を含むDay1の内容を紹介したが、後編では久野金属工業 取締役副社長の久野功雄氏による特別講演「機械・人・仕事のDXによる生産性革命」の内容を含むDay2の内容をダイジェストで紹介する。

人は付加価値の高い作業を

 久野金属工業は、1947年に創業。社員数は356人で、自動車用および産業用プレス部品の設計や開発、金型製作、プレス加工などを行っている。直近は電気自動車(EV)関連部品の生産に注力しており、米国、ドイツ、中国向けに製品を供給しているという。

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久野金属工業 取締役副社長の久野功雄氏

 業績は堅調に推移してきたが、2020年に入り、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がまん延した影響により、量産部品の売り上げが日当たりベースで前年比37%減と大幅に落ち込んだことなどもあり(現在は回復している)、需要変動の激しい状況が続いている。同社では以前からIoT(モノのインターネット)への取り組みを強化しているが、久野氏は「今回のコロナは、どの企業においても史上最大の経営危機といえるのではないか」と考え、あらためて自社の強みにフォーカスし持続可能性を意識した取り組みを強化している。

 その手段として重視しているのが、自社業務の自動化・IT化である。人は付加価値の高い仕事を行う環境を整えることに取り組み、営業管理や生産管理、品質管理、仕入れ先管理のシステムから、開発系システム、IoTなどに至るものを関連会社とともに作り上げたという。

「IoT GO」による簡単データ取得で残業時間を3343時間削減

 機械のDX(デジタルトランスフォーメーション、デジタル変革)として取り組むのが、製造業向けIoTクラウドサービス「IoT GO」の活用である。「IoT GO」は久野金属工業とシステムインテグレーターで久野金属工業の関連会社であるマイクロリンクが共同開発した、中小製造業向けのIoT基盤である。久野金属工業自身の生産ラインで実地検証を重ね、製造現場のニーズに対応した使いやすさや見やすさ、データの安全性、安定性などを追求していることが特徴だ。

 久野金属工業では「IoT GO」活用以前から、IoTを研磨機などで活用し、さまざま情報を収集して最適な加工条件を見つけ出し生産性を高める取り組みを進めてきた。しかし、他の古い製造設備に同じ仕組みを水平展開するには、さまざまな条件が折り合わず、難しかったという。そこで、取得する情報をON/OFFの稼働情報だけに絞り込み、古い機械からも簡単にデータ収集が行えるようにした。この情報を機械に取り付けた送信機からクラウドに送り、PC・スマホなどでこれらの情報を確認できるようにした。

 この「IoT GO」を導入したことで、もともとある生産ラインの平均稼働率が32%だったのに対し、導入1カ月後には55%に上昇させることができたという。さらに、導入後3年がたった2020年8月には71%となり「生産性でいうと2.2倍となった。こうした現象がたくさんの導入ラインで生まれている」と久野氏は成果を強調する。

 さらに「IoT GO」の導入により改善にかかる時間が短縮できる価値も生まれているという。稼働率が下がる要因として大きいものには、サイクルタイムの遅れとチョコ停(合わせて約7割を占める)がある。サイクルタイムのバラつきをなくすためには、人作業における「歩数を減らす」「高さを合わせる」「機械と人が同時進行する」などを意識することで、実現可能となる。「IoT GO」により、製造データがリアルタイムで手間をかけずに取得できることから、生産技術部の力を借りずに製造部門だけで、これらの改善活動のトライ&エラーを日常的に進められるようになる。

 その結果、サイクルタイムが4.6秒減少し、2カ月後には稼働率は82%から92%へ上昇する成果が得られたという。これらにより最近1年間の生産性向上効果として、残業時間が3343時間減少し「年間2億円の抑制効果があった」(久野氏)としている。

Webサイト強化で営業の自動化も

 また、営業のDXとしては、Webサイトの強化により、新規顧客の自動開拓に取り組んだ。具体的には「自社が強い技術・製品を整理整頓して表示」「WebサイトのAmazon.com化」「キラーワード」の3つを進めた。例えば、キラーワードとして「ECUハウジング」を置き、Amazon.comのように関連商品を豊富に掲載するようにし、さらにSEO(サーチエンジンオプティミゼーション)強化により、検索流入を増やすようにした。これにより、強化前の新規依頼件数は2014年が2社、2015年3社だったものが、強化後は、2016年が年間15社、2017年が19社、2018年が25社に伸びた。さらに強化を進めた2019年には59社の新規依頼件数を獲得できたという。久野氏は「新規顧客は全てWebサイト経由で獲得した」と成果を強調した。

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