技術者が行けない! タイでの新製品量産を遠隔立ち上げしたOKIデータの挑戦:スマート工場最前線(4/4 ページ)
COVID-19により人の移動が制限される中、従来は技術者を派遣していた海外工場での量産立ち上げなどが行えない状況が生まれている。こうした中で、新規設計製品の量産立ち上げを完全リモートで行い成功したのがOKIデータである。カラーLEDプリンタ戦略製品の遠隔立ち上げへの取り組みを紹介する。
リモート立ち上げに成功し3億円以上のコスト削減へ
これらの取り組みの結果、「C650」のリモート量産立ち上げに成功し無事に出荷を行うことができた。また、完全にリモートで行えたために、出張費や人件費などの削減にもつながり、約3億円のビジネス効果も生み出すことができたという。加えて「海外工場のメンバーが自分たちだけで、新機種の生産立ち上げを行えたことで、スキルアップととともに主体性を持って取り組めるようになるなど、副次的な効果も生まれている」と末次氏は語っている。
また、タイ工場にとっても「日本からの技術者派遣がないのはまだまだ大変なことが多いのも事実だが、リモートだけでできることも多いことは分かった。日常的につながることで、相談しやすくなる利点などもある」とタイ工場(ODMT)生産技術/製造統括の磯貝啓太氏は語っている。
現状でリモートでカバーできるのは全作業の7割
今後はこれらの仕組みをコロナ禍が終了した後も生かし続けていく方針だ。「プロセスも変わり、何かあれば日本のメンバーも現地のメンバーもコックピットルームに集まるような体制となった。これを生かして、ちょっとした問題でも現地と一緒に解決するような形で進めていく」と末次氏は語っている。
タイ工場だけでなく中国工場との接続も進めており、日本の拠点内ではコックピットルームの増設を積極的に進めているところだ。ただ、現状では「今回は無事にリモートで量産立ち上げができたが、現状でカバーできているのはリアルで行う作業の7割程度だと考えている。残りの3割の部分は、コミュニケーションに長く時間をかけて齟齬を取り除いて何とか進めたという形で、この領域を問題なく行うための仕組み作りは必要だ。ここは新たな技術の採用で埋めていきたい」と末次氏は語っている。具体的にはスマートグラスや書画カメラ、VRなどの採用を検討しているという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- お手本はマツダ、“現場の使いやすさ”を追求したOKIのLEDプリンタ
OKIデータは2020年10月22日、医療や流通、小売り、工場など印刷が欠かせない現場向けに特化したカラーLEDプリンタ「COREFIDO(コアフィード)C650dnw」を発売したと発表した。現場向けでのニーズを徹底して調査し、同等機種で最小クラスの本体サイズを実現した他、設置やメンテナンスの省スペース化、高い生産性を両立させた点が特徴である。 - 苦節8年、ラベル印刷市場で勝負をかけるOKIデータのカラーLEDラベルプリンタ
ビジネスプリンタ市場に続く、次なる成長のステージとして、ラベル印刷市場向けにカラーLEDラベルプリンタ「Pro1050」「Pro1040」を投入したOKIデータ。同社はなぜ未知の領域であるラベル業界に進出するのか。その狙い、そして苦節8年を費やして完成させたPro1050/Pro1040の特長を製品担当者に聞いた。 - “お手製AI”でロボットを強化学習、技術者工数を10分の1にしたOKIデータの革新
OKIデータ LED統括工場では、カラープリンタのLED関連部品の組み立て工程において、双腕ロボットと強化学習を組み合わせることで最適化を実現し、生産ライン構築における技術者の工数を10分の1に削減することに成功したという。 - コロナ禍で新規製品開発をどう行ったか、リコー発スタートアップの挑戦
リコー発のスタートアップ企業として全天球カメラ「IQUI(イクイ)」を2020年10月から展開するベクノス。同社は2020年3月にペン型全天球カメラの商品化を発表してから、量産開発および生産準備を進め、コロナ禍で制約を受ける中でも無事に製品リリースを成し遂げた。コロナ禍におけるモノづくりの苦労としてどのようなものがあったのだろうか。 - コロナ禍で加速する製造現場のリモート化、「現地現物現実」をどう再現するか
COVID-19により特に人の移動が制限されていることから、「リモート化」の推進はあらゆる業務で必須となってきている。こうした中で従来とは大きく異なってきているのが「現地現物主義」が徹底的に進められてきた「製造現場のリモート化」である。 - いまさら聞けない「デジタルツイン」
デジタルツインというキーワードを、IoT活用やデジタル変革(DX)の流れの中で耳にする機会が多くなった。デジタルツインとは何か? について「5分」で理解できるよう簡単に分かりやすく解説する。