コロナ禍に役立つハンズフリードアオープナーの設計製造手法に迫る(後編):デジタルモノづくり(3/3 ページ)
オフィス内での新型コロナウイルス感染症対策に役立つ製品として、手のひらを使わずに腕でドアを開くことのできる「ハンズフリードアオープナー」。このハンズフリードアオープナーを自社で設計製造した電通国際情報サービスの取り組みについて紹介する。今回の後編では、CAEの活用と、位相最適化、ラティス構造最適化などについて説明する。
3Dプリンティングする際の注意点
これで設計方針を満足する形状の設計が完了しましたので、次は実際に製造を行います。今回の製造は、DMM.makeの3Dプリントサービスを利用させていただきました。
3Dプリンティングを行うに当たり考慮したのは材料と印刷方式の選定です。今回は、材料はポリアミドベースの「PA12GB」を、印刷方式はマルチジェットフュージョン方式を採用しました。PA12GBとマルチジェットフュージョン方式の組み合わせを採用したのは、材料異方性が出にくいことが理由です。一般的に、3Dプリンティングでは積層方向が存在するため、積層に沿って破損する恐れがありますが、このマルチジェットフュージョン方式では材料異方性が出にくいため、積層剥離を原因とする破損を低減できると考えたのです。そして、完成したラティス構造のハンズフリードアオープナーと、実際にドアに取り付けた状態の写真が以下の図8、図9、図10になります。
当初の設計方針でもあった「人の目を引いて使いたくなるような格好良い形状にしたい」という観点ですが、これはぜひ読者の皆さまにご判断いただきたいと思います。1つ1つのラティス構造が有機的に形状を構成しており、人目を引くような形状が作れたのではないかと思っています。このラティス構造のハンズフリードアオープナーは、ISID本社オフィスの来訪者フロアの一部に取り付けていますので、立ち寄られる際にはぜひご覧いただければ幸いです。
前後編にわたって、ハンズフリードアオープナーの設計製造手法を紹介させていただきましたが、これで本連載は終了となります。最後までお読みいただきありがとうございます。これからもコロナ対策や製造業の幅広い業務に対して、CAEをはじめとしたさまざまなソリューションで貢献していきたいと考えております。
(連載完)
筆者プロフィール
千葉 栄馬(ちば はるま) 株式会社電通国際情報サービス
前職では自動車の開発エンジニアとして設計・解析の業務に従事。2018年に電通国際情報サービス入社。主に製造業向けのCAE業務コンサルティングに従事している。
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