単位系の統一をキチンとしないから解析をミスる:仕事にちゃんと役立つ材料力学(1)(1/2 ページ)
フリーソフトや資料を駆使して、単位系換算のミスを効率よくトリプルチェックしていく。これだけでも、構造解析のミスはかなり減る!
かつての僕も、材力の単位を落っことしたわけですが
僕は大学で建築学を専攻していました。しかも、その中で構造といわれる分野。よりによって、その必須科目である材料力学の単位を落としました。「このままでは卒業できない……」。
取りあえず再履修はできたものの、今度こそ落とせない……。「これまでとはナニかを変えなければ、また単位を落とすぞ……」――そういう危機感に追い詰められて、次のような工夫をしました。
とにかく教授の講義をシッカリと聴く。世の中には数式を見ただけで、その世界観を理解する人がいますが、僕にはそんな才能もなく、教授の話をイラストやグラフに置き換えて、授業が終わると研究室に押し掛けて、僕がイメージして描いたイラストやメモが正しいかどうかを確認しました。
それを繰り返すこと1年……。何とか自分のアタマの中に材料力学のイメージがボンヤリと出来上がりました。しかしながら、その使い方がハッキリとはしませんでした。材料力学の知識がCAEと結び付いたのは、それからしばらくしてのことです。それと同時に材料力学の知識がないと、CAEで得た結果を間違えて解釈してしまう、ということも分かりました。
大学を出た僕が就職した会社は、なんとコンピュータによる構造解析を行う会社でした。その仕事の中で、お客さまにCAEによる解析結果を理解するために、材料力学を教えるという仕事を命ぜられました。
材料力学を再履修したときに描いたイラストやメモを基にして、材料力学を教えるテキストを作りました。こんな事情ですので、このテキストには、イラストが多く、数式は必要最低限しか出てこないものとなりました。このテキストは講義を重ねるごとにアップデートされ、講座の名称も「解析工房」と名前を変えて、これまで数百人の方に受講していただくことができました。
この連載は、この解析工房で取り上げた題材や資料をモトにして構成し直しました。材料力学が苦手なアナタにきっと役に立つはずです。どうぞよろしくお付き合いください。
こんな人に読んでもらいたい連載です
解析工房は、材料力学と有限要素法という2つの講座から構成されています。解析工房を開催するたびに、受講者の皆さんから受講前に、材料力学と有限要素法について、アンケートを取っています。
その結果を図1に示します。
材料力学については、約65%の人が「忘れてしまった」状態で製品を設計しています!
正直、これにはちょっと驚きました。さらに、有限要素法については、90%以上の人が仕組みをまったく分からずに解析ツールを使っているということが分かりました。
確かに、設計者の忙しさは加速しています。それを助ける1つの方法として、最近の設計者向けの解析ツールはよくできています。材料力学も有限要素法の仕組みも知らなくても、答えが出ちゃいますからね。でも結構大きな落とし穴があったりして……。材料力学をきちんと理解していれば、大きな落とし穴に落ちる可能性はかなり小さくなります。
そういうわけで、この連載は若手の機械設計者の方を対象に「アタマの中にきちんと材料力学のイメージを持っていただくこと」を目的とします。
一般に材料力学の本を開いてみると、「片持ちばりがどうした、こうした」「モーメントがどうした、こうした」という話が展開されています。これが本来の材料力学の正しい姿です。でも、この連載、材料力学という名前は付いていますが、退屈で難しい話はほかに譲って、設計の現場で役に立つことに絞って解説していきたいと思っています。
ですから、材料力学としては、正確な表現になっていない場合があるかもしれませんし、アタマにイメージを作ってもらうために、乱暴な表現になるかもしれません。そう思った場合は材料力学のホントウの教科書によって、記事から得た知識をさらにアナタのアタマで、より正確なものとしてください。
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