ホンハイがEV参入、シャオミも? 「私たち以外」にとってのクルマとは:自動車業界の1週間を振り返る(1/2 ページ)
1週間おつかれさまでした。2月が終わってしまいますね。月並みですが「1月は行く、2月は逃げる、3月は去る」という表現の的確さを実感します。ここ何年か、私の周囲ではメンバーがガラッと変わることがないので忘れがちですが、春は異動の季節でもありますね。先週末のホンダの社長交代に続き、今週はスズキ 代表取締役会長の鈴木修氏が退任することが発表されました。トップの交代や、長く自動車業界の最前線にいた人の退任は、大きな節目ですね。
1週間おつかれさまでした。2月が終わってしまいますね。月並みですが「1月は行く、2月は逃げる、3月は去る」という表現の的確さを実感します。ここ何年か、私の周囲ではメンバーがガラッと変わることがないので忘れがちですが、春は異動の季節でもありますね。先週末のホンダの社長交代に続き、今週はスズキ 代表取締役会長の鈴木修氏が退任することが発表されました。トップの交代や、長く自動車業界の最前線にいた人の退任は、大きな節目ですね。
鈴木修氏のことは自動車業界を長く取材している先輩諸氏からさまざまなエピソードを聞きましたが、自分で見聞きした中で印象に残っているのは、燃費測定や完成検査に関する不正問題での会見の受け答えでした。テレビ局や大手新聞社のきつい質問に修氏がひょうひょうと答えるのを聞きながら、百戦錬磨の経営者というのはこういうことなんだなあと思った記憶があります。こうした会見では大抵、修氏と代表取締役社長の鈴木俊宏氏が並んでいましたが、やはり修氏の存在感が強かったように思います。
俊宏氏について思い出すのは、日本自動車工業会の活動の一環で自動車メーカーのトップが大学で講演を行う「出張授業」です。スズキの事業や取り組みについていろいろと話す中で、一番人柄を感じたのはバイクの話題になったときでした。趣味性の高い乗り物について自動車メーカーのトップが楽しそうに語るのは魅力的に映ります。その一方で、生活に密着した小さなクルマやシニアカーのような移動手段についても、モーターショーで熱く語っておられました。
先日、何かのことで調べ物をしていて行き着いたのが、Apple(アップル)がキャッチコピーに使った「The Computer for the rest of us」という言葉です。専門家やコンピューターが好きな人以外の人、つまり普通の人のためのコンピュータという意味なのだそうです。自動車も、これと似たところがありますね。
自動運転技術や電動化に興味を持って新しいクルマを買う人や、デザイン・乗り味など何かにこだわりがあってお金をかけてクルマを選ぶ人がいる一方で、新技術に関心がなく、必要最低限で十分だという人もいます。いずれの自動車メーカーもこの両方のお客さんを相手にしていますが、スズキの製品のように生活に密着した移動手段ほど「for the Rest of Us」が求められるように思いました。小さくて軽いクルマづくりの強みを生かしながら、「普通の人のため」と環境規制対応をどのように両立していくのか、気になりますね。
「〇〇以外の人」は、ユーザーだけでなくクルマを作る側にもいえるようになってきました。伝統的な自動車メーカー以外もクルマを開発して販売しようとしています。鴻海精密工業(ホンハイ)と米国のEV(電気自動車)ベンチャーであるFISKER(フィスカー)は2021年2月24日、2023年第4四半期からEVの生産を開始すると発表しました。
このEVは、フィスカーにとって2車種目となるモデルで、ホンハイと共同開発します。両社は25万台以上の年間生産台数を計画しています。フィスカーの1車種目は「OCEAN(オーシャン)」というSUVで、2022年第4四半期から生産します。価格は3万7499ドル(約397万円)と2万9999ドル(約318万円)の2グレードだとしています。すでに予約金付きで1万2000件の事前受注があります。
また、スマートフォン大手の小米(シャオミ)もEVへの参入を検討していると報じられました。EVの受託製造なのか、自社で開発するつもりがあるのかは明らかになっていません。
「自動車の量産は簡単なことではない」「モーターとバッテリーさえあればEVが完成するという考えは大間違いだ」という指摘をよく見聞きします。こうした意見には賛成です。モーターとバッテリーの知見があったダイソンがEVから撤退したように、異業種や新興企業のEV参入は簡単ではありません。ただ、CUI(キャラクタユーザーインタフェース)のコンピュータに対してGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)のコンピュータが生まれたように、ホンハイやシャオミのような会社が伝統的な自動車とは違う考えでクルマを見ると、何か新しいアプローチが出てくるのかもしれません(これは彼らが安全性を軽視するという意味では決してありません)。
「本当に彼らがクルマを作れるのか」という疑いの目で見るばかりでなく、「彼らがどうやってどんなクルマを作ろうとしているのか」という点に関心を持ちながらウォッチしたいですね。
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