受容的な社会の構築に向け、産学連携による研究部門を設置:デザインの力
東京大学先端科学技術研究センターは、企業9社と共同で「先端アートデザイン社会連携研究部門」を設置した。研究者と企業、アート領域の専門家による分野横断的なグループを組織することで、複雑な社会的課題を多様な視点から解決していく。
東京大学先端科学技術研究センター(東大先端研)は2021年1月27日、企業と共同で「先端アートデザイン社会連携研究部門」(英文名:Advanced Art Design Laboratory)を設置したと発表した。連携企業は資生堂、住友商事、ソニー、日本たばこ産業、マツダ、ヤマハ、ヤマハ発動機、リクルート、BLBG(ブリティッシュ・ラグジュアリーブランド・グループ)の9社だ。
SDGs(持続可能な開発目標)をはじめ、全ての人を受容する社会をつくり、デザインすることが重要になっている。しかし、複雑な社会的課題を解決するには、客観的に導かれる最適解だけではなく、人と自然と科学技術の在り方を包括的に捉え直し、取り組む必要がある。
同研究部門では、東大先端研の研究者と企業、アートデザイン領域の第一線で活躍する人材による分野横断的な研究グループを組織することで、多様な視点から生まれるアイデアをスピーディーに社会実装していく。また、複雑な社会問題にも対応できる人材を育成する。
同研究部門が展開するプロジェクトは、部門内に開設するデザイン、アート、デザインエンジニアリングの3つのラボを横断する形で進める。研究部門の統括は、東大先端研の所長で生命知能システム分野教授の神崎亮平氏が担当する。各ラボの中心となるのは、デザインラボはミラノ工科大学などで指導するデザイナーの伊藤節氏と伊藤志信氏、アートラボは東京フィルハーモニー交響楽団のコンサートマスターでバイオリニストの近藤薫氏、デザインエンジニアリングラボはTANGENTの創業者でデザインエンジニアの吉本英樹氏となる。
さらに、同研究部門を発展させるため、和歌山県の高野町やミラノビコッカ大学など東大先端研の連携協定機関ともに、アートデザイン領域で世界的に活躍する人材を「先端アートデザイン分野アドバイザー」として迎え、協力を得る。
2021年4月からは、東京大学大学院工学系研究科博士課程(先端学際工学専攻)にて「先端アートデザイン学」の授業を開始する。同科目は同研究部門の教員、先端アートデザイン分野アドバイザー、異分野の研究者を迎えて、インクルーシブな未来の在り方を議論するもので、同科目を通じて、人材育成にも注力していく。
先端アートデザイン社会連携研究部門の設置期間は2021年1月1日〜2025年12月31日の5年間。ロゴマークは、「和」をもって持続的なインクルーシブ社会を創造することを表現したデザインとなっている。
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