Armのセキュリティ認証「PSA Certified」をリッチOSに広げる「PARSEC」とは:Arm最新動向報告(13)(3/3 ページ)
Armが開催した年次イベント「Arm DevSummit 2020」の発表内容をピックアップする形で同社の最新動向について報告する本連載。今回は、「PARSEC」と「PSA Certified」を中心としたセキュリティ周りのアップデートについて紹介する。
「PSA Certified」はMCUが先行、MPUへの浸透は遅れる
さて、では「PSA Certified」はどんな感じになっているのか? というのが次の問題。2021年2月1日現在で、PSA Certifiedを取得した製品は合計57に達している。
特徴的なのは、PSA Certifiedで用意している、デバイスそのものがどれだけ強固にセキュリティ対策を行っているかを示すレベル1〜3のうち、レベル2を取得した製品が少なからずあることだろう。現時点では、以下の7製品がレベル2を取得している。
- Renesas RA6M4
- NXM Autonomous Security
- NXP LPC55S16
- Silicon Labs Secure Vault
- Nuvoton NuMicro M2351 Series
- STMicroelectronics STM32L5
- UNISOC V5663
ちなみに、NXM Autonomous SecurityとSilicon Labs Secure Vaultは、製品というよりはセキュリティ技術(というか、セキュリティ対応の環境というか)になる。NXM Autonomous SecurityはSTM32L562E Die 472にTFMv1.0 RC2とSTM32CUBE_L5 V1.2.0を組み合わせ、その上にNXM Autonomous Securityを実装した形で、Silicon Labs Secure VaultはEFR32MG21BにSE Firmware version 1.2.4を載せた形でそれぞれ認証を取得している。このため、どちらもDeveloper Typeは“System Software”ではなく“Chip”となっている。まぁ現状はMCUのみというわけだ。
実はレベル2ではなくレベル1まで引き下げても、認証を取得しているのはほとんどがMCUである。MPUとしては、辛うじてNXPの「i.MX 7 ULP1」「i.MX 8M Mini」「i.MX 8M Nano」「i.MX 8QM」「i.MX 8QualdXPlus」が並んではいるが、前回記事でふれたProject CassiniというかArm SystemReadyの認証デバイスが、現時点ではPSA Certifiedに名前が入っておらず全滅しているというのが何ともいえない味を出している。
まぁこれは鶏と卵みたいなもので、MCUについては既にPSAに対応したRTOS(RT-Thread、Zephyr、X-Wave、Mbed OS、Keil RTX5、FreeRTOS、etc……)が多数存在するし、多数のハードウェアが当初からPSA Certifiedを取得したので、競合メーカーも負けじと認証を取得し、結果として急速に市場が広がっていったという背景がある。しかし、MPUに関しては、対応OSが現状Foundries.ioの「Linux microPlatform」があるだけであって、まだ広範に使われているとは言い難い。それもあって、MPUに関してはPSA Certifiedへの取り組みがやや及び腰というか、後回しになっている感もなくはない。
もっとも、MCUに比べれば、MPUのPSAへの対応はどうしても時間がかかるのも事実であるため多少遅くなるのは致し方ないところ。今後、どの程度PSA CertifiedなMPUベースSoCが普及するのかが問われるところである。
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