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ArmはなぜIoT事業を切り離すのか、表と裏から読み解く:Arm最新動向報告(10)(1/2 ページ)
Armは2020年7月7日、ISG(IoT Service Group)で展開してきたIoT(モノのインターネット))事業をソフトバンクグループ傘下に移管する方針を明らかにした。この決断の背景には何があったのか。技術ライターの大原雄介氏が、表と裏の両面から読み解く。
既報の通り、英国のArmはISG(IoT Service Group)として展開してきた「Pelion IoT Services」とトレジャーデータ(Treasure Data)のCDPなどのサービスについて、これをソフトバンクグループ(以下、ソフトバンク)に移管するという提案を行ったことを明らかにした。本稿では、このニュースを深堀りしてみたいと思う。
「ArmのIoT事業」とは何か
そもそも、現在のISGが提供する製品はこちらのWebサイトにまとまっているが、大まかに分けて以下の4つになる。
- Pelion IoT Platform(図1)
- IoT向けクラウドサービスの総称。図1の中のDeviceに対して、Connectivity Management Service、Device Management Service、Data Management Serviceという3つのサービスを提供する。このうちData Management ServiceはトレジャーデータのCDP/DDPがこれに該当するサービスである
図1 Device Managementは旧Mbed Cloud、Connectivity Management Serviceは旧StreamのIoT-Xがそれぞれ名前を変えたものである(クリックで拡大)
- Mbed OS
- 以前にこちらの記事でもご紹介したMCU向けのRTOSである。これに加えて、よりリッチなOS環境でも利用できる「Mbed Client」や、2019年に発表された「Mbed Linux OS」などもここに含まれることになる
- Kigen SIM Solutions
- これも以前の記事で紹介したソリューションだが、デバイスにeSIMを組み込んで利用するための環境を提供する。具体的には、デバイスの側でこのeSIMを取り扱えるようにする環境(OS/SDK)を提供するとともに、eSIMに対してユーザープロファイルをプロビジョニングするための「Kigen Server Solutions」を提供する
- IoT SoC Solutions
- 「Cortex-M」ベースのSoC(要するにMCUである)を簡単かつ手早く実装するためのソリューションを提供する。なお、Cortex-MのIPそのものはISGのビジネスではない(図2)
図2 Processor IP、Application Specific IP(GPU/NPU/etc)、Power Control、System IP(インターコネクトなど)、Security IPおよびこれらをサポートするソフトウェア類は個別にも提供されるし、これらをまとめて提供する「Corstone」というIPパッケージも用意される(クリックで拡大)
さて、今回のArmのアナウンスによれば、ISGのビジネスのうち“IoT Platform and Treasure Data”が移管の対象になる、と説明している。つまり、Pelion IoT Platformは間違いなく移管されるとして、現実問題としてはMbed OSとKigen SIM Solutionsも恐らくは移管対象になるだろう。ISGに残る(というか、ISGというグループ自体がなくなりそうだが)のは、IoT SoC Solutionsだけになりそうだ。
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